(公財)東レ科学振興会・海外の科学振興財団

  • 科学技術振興

東レグループは、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を、イノベーションの実践によって具体的に実現することを目指しています。その実現には、未来を担う人材の育成と確保が不可欠です。こうした考えのもと、東レグループは長期的な視点に立ち、(公財)東レ科学振興会の活動をはじめ、マレーシア、インドネシア、タイ、韓国における科学振興財団と連携し、各国の基礎科学や理科教育の振興・支援に取り組んでいます。これらの取り組みは、当社にとって重要な社会貢献活動の柱のひとつであり、科学技術の発展を担う研究者の活動を後押ししています。

(公財)東レ科学振興会

(財)東洋レーヨン科学振興会第1回贈呈式(1961年3月)(財)東洋レーヨン科学振興会第1回贈呈式(1961年3月)

(公財)東レ科学振興会(旧:(財)東洋レーヨン科学振興会)は、東レ(株)の創立35周年を記念して1960年に設立されました。科学技術の研究を助成振興し、科学技術思想の普及を図ることによって科学技術および文化の向上発展に寄与することを目的としています。設立にあたり、東レ(株)は10億円の基本財産を拠出し、現在に至るまで事業活動費として継続的に寄付を行うことで、財団の活動を支えています。
同振興会は、企業財団の草分けとして設立当時に注目を集め、基礎科学分野に特化した助成・顕彰や、中学校・高等学校で理科教育に携わる先生方を表彰する理科教育賞など、他の財団には見られない独自の支援活動は現在も高い評価を受けています。これまでに同振興会の科学技術研究助成受領者、科学技術賞受賞者、諸援助の受領者の中から6名が後年にノーベル賞を受賞しています。

ノーベル賞受賞者

  • 江崎玲於奈氏(1961年東レ科学技術賞受賞、1973年ノーベル物理学賞受賞)
  • 小柴昌俊氏(1968~1970年諸援助受領、2002年ノーベル物理学賞受賞)
  • 野依良治氏(1990年東レ科学技術賞受賞、2001年ノーベル化学賞受賞)
  • 赤﨑勇氏(2000年東レ科学技術賞受賞、2014年ノーベル物理学賞受賞)
  • 山中伸弥氏(2004年東レ科学技術研究助成受領、2012年ノーベル生理学・医学賞受賞)
  • 本庶佑氏(1981年東レ科学技術研究助成受領、2018年ノーベル生理学・医学賞受賞)

(公財)東レ科学振興会の主な事業

事業名 内容
東レ科学技術研究助成 科学技術に関する萌芽的な研究を行っている若手研究者に対する研究費援助
東レ科学技術賞 科学技術の分野で顕著な業績を挙げた方の顕彰
東レ理科教育賞 中学校・高等学校で創意と工夫により著しい教育効果を挙げた先生方の顕彰
海外研究助成 インドネシア・マレーシア・タイの東南アジア3カ国で、科学技術に関する基礎的な研究を行っている若手研究者に対する研究費助成
  1. 賞、助成の選考はいずれも専門家による第三者委員会で行っています。

1960-2024年度の累計事業実績

区分 件数 金額(百万円)
科学技術研究助成 711 7,535
科学技術賞 135 518
理科教育賞 781 242
国内 計 1,627 8,295
海外研究助成 919 533
国内・海外合計 2,546 8,828
  1. 「海外研究助成」は、1989-1993年の大学への直接助成(61件、0.68億円)を含みます。

令和6年度贈呈式の開催

(公財)東レ科学振興会は、2025年2月に第65回東レ科学技術賞、東レ科学技術研究助成、そして第56回東レ理科教育賞を決定し、同年3月に令和6年度贈呈式を開催しました。贈呈式では、文部科学大臣および日本学士院長からの祝辞をいただき、東レ科学技術賞を受賞した永長直人博士(理化学研究所基礎量子科学研究プログラム プログラムディレクター)および胡桃坂仁志博士(東京大学定量生命科学研究所教授)、文部科学大臣賞をはじめとする東レ理科教育賞を受賞した教育者に対して、賞状、メダル、副賞賞金を贈呈しました。さらに、科学技術研究助成として、11名の研究者に対し総額1億3,000万円の助成金を贈呈しました。
贈呈式での挨拶において、同振興会の会長である東レ(株)日覺会長は、「2024年のノーベル物理学賞が機械学習の基礎技術の発明に関するものであり、ノーベル化学賞が計算によるタンパク質設計と構造予測に関するものであったように、科学技術の世界は大きく変化しており、基礎研究の重要性がますます高まっていると実感しています。東レ科学振興会は今後も、研究の助成事業や研究者や先生方の顕彰を通じて、日本の基礎科学および理科教育の発展・振興に貢献してまいります」と述べました。

  • (公財)東レ科学振興会会長の東レ(株)日覺会長による挨拶(公財)東レ科学振興会会長の東レ(株)日覺会長による挨拶
  • (公財)東レ科学振興会会長の東レ(株)日覺会長、相原選考委員長(前列左から4人目、5人目)と助成金受領者(公財)東レ科学振興会会長の東レ(株)日覺会長、相原選考委員長(前列左から4人目、5人目)と助成金受領者
永長 直人博士

永長 直人博士
「固体電子スピンの幾何学的量子現象の理論研究」

実空間および運動量空間におけるスピンの配置に由来する量子現象が普遍的に存在することを示し、固体電子スピンに関する画期的で世界的に高く評価される理論予測を行いました。

胡桃坂 仁志博士

胡桃坂 仁志博士
「ゲノム機能制御におけるクロマチン構造と機能の解明」

独自に高品質な試験管内クロマチン再構成技術を開発して、構造生物学と生化学を融合した新しい研究手法を確立し、クロマチン制御の構造基盤とその作動メカニズムを解明しました。

(公財)東レ科学振興会の特色とも言える、中学校・高等学校の理科教育において、創意と工夫により著しい教育効果をあげた先生方の顕彰である東レ理科教育賞文部科学大臣賞は、山口県立徳山高等学校教諭の末谷健志氏が受賞しました。

吉村 昭彦博士

末谷 健志氏
「運動のベクトルを可視化するAR教材の開発」

スマートフォン内蔵センサーで取得した物体の速度や加速度、物体にはたらいている力を、拡張現実(AR)技術を用いて現実空間に重ね合わせて表示する優れた教材を開発しました。

海外における科学振興財団

東レ(株)は、1960年代から事業展開を行っている東南アジア3カ国において、科学技術の向上、発展と理科教育の振興に貢献するため、1993年にマレーシア東レ科学振興財団とインドネシア東レ科学振興財団を、1994年にタイ東レ科学振興財団を設立しました。
以降、基金の運用収益、(公財)東レ科学振興会からの助成、各国東レグループからの毎年の寄付により、優れた科学研究者や、基礎科学の若手研究者、理科教育者を対象に支援を行っています。科学技術および理科教育についての優れた業績に対する褒賞と自然科学の研究に対する助成を行い、現地社会から高い評価を受けています。
さらに、事業拡大が続く韓国でも同様の取り組みを開始するため、2018年に韓国東レ科学振興財団を設立しました。
これら科学振興財団の活動は、科学技術関係者や青少年、教育関係者の関心を喚起し、各国の科学技術の中長期的な発展に寄与しています。また、これを通じて、各国と日本との相互理解、友好親善、そして経済発展に寄与することを願い、取り組みを続けています。

マレーシア東レ科学振興財団
(Malaysia Toray Science Foundation(MTSF))

MTSFは、1993年8月の設立以降、2024年度までに累計1,209万リンギットを拠出し912名の研究者、理科教育者を助成、表彰してきました。毎年開催する贈呈式には、マレーシア政府や在マレーシア日本大使館からご出席を賜り、受賞者や助成を受ける研究者にとって名誉ある場となっています。
2024年11月には、クアラルンプールで第31回マレーシア東レ科学振興財団贈呈式を開催しました。この式では、総額27.7万リンギットの賞金・助成金が、マレーシアの科学者1名、若手研究者9名、理科教育者15名の計25名に贈呈されました。
贈呈式では、マレーシア科学技術イノベーション省のチャン リ カン大臣および在マレーシア日本国大使館の狩俣臨時代理大使から、MTSFが過去30年以上にわたりマレーシアの科学技術の発展に大きく貢献してきたことに対して、称賛の言葉をいただきました。また、MTSFの名誉会長である東レ(株)の日覺会長は、マレーシア政府の協力と支援に感謝の意を表するとともに、東レは今後も企業理念に基づき、マレーシアの科学技術の発展を支援していく旨の祝辞を述べました。

  • 科学技術賞の受賞者との記念撮影科学技術賞の受賞者との記念撮影
  • チャン大臣に記念品を贈呈するMTSF名誉会長の東レ(株)日覺会長チャン大臣に記念品を贈呈するMTSF名誉会長の東レ(株)日覺会長

インドネシア東レ科学振興財団
(Indonesia Toray Science Foundation(ITSF))

ITSFは、1993年12月の設立以来、2024年度までに累計260億ルピアを拠出し、884人の研究者、理科教育者を助成、表彰してきました。研究助成受領者の多くが、インドネシア大学、バンドン工科大学、ガジャマダ大学、スラバヤ工科大学など有力大学の教授、准教授やインドネシア科学院の研究者として、同国の科学技術の発展に携わっています。
2025年1月、ジャカルタで開催された第31回インドネシア東レ科学振興財団贈呈式では、総額10.5億ルピアの賞金・助成金が、科学者1名、若手研究者10名、理科教育者18名の計29名に贈呈されました。贈呈式には、インドネシアのム・ティ初等中等教育大臣、在インドネシア日本国大使館の永井次席公使、インドネシア高等教育研究技術省のプリアンダナ研究開発人材育成局長、そして、ITSF会長であり、インドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)のハンドコ長官など、名誉ある来賓が出席しました。
ITSFの名誉会長である東レ(株)の日覺会長はビデオメッセージで、受賞者への祝辞を述べ、ITSFの活動を通じて東レがインドネシアの科学技術支援や研究開発の促進にどのように関与してきたかを触れました。特に、持続可能な社会の実現に向けた研究と人材育成の重要性に言及し、今後も積極的にサポートしていく意向を示しました。そして、式典に参加された皆様に感謝の意を表し、受賞者の今後の活躍に期待を寄せました。

  • 受賞者との記念撮影受賞者との記念撮影
  • ビデオメッセージを通じて挨拶するITSF名誉会長の東レ(株)日覺会長ビデオメッセージを通じて挨拶するITSF名誉会長の東レ(株)日覺会長

タイ東レ科学振興財団
(Thailand Toray Science Foundation(TTSF))

TTSFは、1994年6月の設立以降、2024年度までに累計1億6,218万バーツを拠出し895名の研究者・団体、理科教育者を助成、表彰してきました。毎年開催する贈呈式には、1995年の第1回から2009年の第15回まではプレム枢密院議員に、2010年の第16回贈呈式からはスラユット枢密院議員長に式典委員長としてご出席を賜り、歴代の受賞者らにとって名誉ある場となっています。
2025年3月にバンコクで第31回タイ東レ科学振興財団贈呈式を開催し、総額5,490千バーツの賞金・助成金を、科学者1名と1団体、若手研究者20名、理科教育者6名の合計27名と1団体に贈呈しました。大鷹正人在タイ日本国大使は、日本とタイの外交関係138周年を祝うとともに、人材育成、規制改革、BCG経済(Bio-Circular-Green Economy)などの分野での協力を進め、持続可能な社会の実現に向けてさらなる努力を行うことを述べました。スラユット枢密院議長は、科学技術が経済・社会発展の基盤であり、持続可能な進歩において重要な役割を果たすと強調し、タイ東レ科学財団が31年間にわたり支援してきた科学技術の発展に感謝の意を表しました。また、受賞者の今後の研究と教育活動が、タイの経済発展と生活の質向上に貢献することに期待を寄せました。最後に、TTSFの名誉会長である東レ(株)の日覺会長は、スラユット枢密院議長、各賞の選考委員、そして式典に関わったすべての方々に感謝の意を表し、今後の研究活動がさらに充実した成果を生み出すことを期待すると締めくくりました。

  • スラユット枢密院議長から表彰を受ける授賞者スラユット枢密院議長から表彰を受ける授賞者
  • 科学技術賞の受賞者との記念撮影科学技術賞の受賞者との記念撮影

韓国東レ科学振興財団
(Korea Toray Science Foundation(KTSF))

KTSFは、韓国における化学および材料分野の持続的な研究風土を築き、基礎科学や関連産業の発展に寄与することに加え、研究開発の奨励と理工系人材育成を通じた次世代研究基盤の拡充を目的に、東レグループの韓国での事業開始55年を機に2018年に設立されました。
設立以来、14名に科学技術賞を表彰し、30名に韓国東レフェローシップを助成、195名の学生に奨学金を支給し、2024年度までに累計59.3億ウォンを拠出しています。
2024年10月に開催した第7回韓国東レ科学振興財団贈呈式には、受賞者、学界および産業界、学生など約185名が参加しました。そして、優秀な研究実績をおさめた2名を韓国東レ科学技術賞、新たな研究活動を開拓しようとする若き研究者5名を韓国東レフェローシップに選定しました。また、科学技術賞受賞者には1億ウォンずつ贈呈し、フェローシップとして選定した研究者へは、3年間、5,000万ウォンずつ研究費を支援しました。
授賞式では、全北大学韓国科学文明学研究所のキム・テホ教授が「韓国科学の歴史と産業の発展」をテーマに講演を行い、参加者の関心を集めました。
授賞式に出席したKTSFの名誉理事長である東レ(株)の日覺会長は歓迎の辞の挨拶で、受賞者への祝意とともに、韓国における60年にわたる事業展開への感謝を伝えました。そして、「KTSFの活動が、科学技術の発展や優秀な人材輩出といった面で貢献し、韓国東レグループの事業・基盤技術が、韓国の発展に寄与することを心より願っている」と述べました。

  • 受賞者とKTSF理事による記念撮影受賞者とKTSF理事による記念撮影
  • 科学技術賞受賞者とご家族による記念撮影科学技術賞受賞者とご家族による記念撮影

「CSRロードマップ 2025」におけるCSRガイドライン10「良き企業市民としての社会貢献活動」の主な取り組みはこちらをご覧ください。