マテリアリティ選定プロセス
マテリアリティの考え方
東レグループは、2026年に「経営のマテリアリティ(重要課題)」を策定しました。
これは、「CSRのマテリアリティ」(2015年策定、2017年・2023年改定)で重視してきた社会課題への視点を継承しつつ、今後10年間の事業環境の変化と、それに伴う戦略リスクおよび機会を踏まえ、経営の視点から重要課題として再定義したものです。
今後も、内部および外部環境の変化を勘案しながら、見直しの必要性について毎年検証・議論していきます。
経営のマテリアリティ選定プロセス
経営のマテリアリティは、ダブルマテリアリティの考え方に基づいてマッピングした社会課題の絞り込みの結果や、有識者など外部ステークホルダーの考えを取り入れて策定したCSRのマテリアリティを基盤に、事業戦略上のリスク・機会の観点を統合して再定義しています。
ステップ1:将来環境の変化分析
将来10年間の環境前提・社会(PESTEL※1)の変化分析、および当社にとっての重要な環境変化となりうる将来シナリオを分析し、戦略リスク・機会を抽出。
ステップ2:経営への影響評価
抽出したリスク・機会に対して、経営への影響の大小などを定量的に評価し、社内での優先順位づけを実施。
ステップ3:CSRのマテリアリティとの照合・統合
経営理念や事業戦略を踏まえて課題を設定した上で「CSRのマテリアリティ」と照合し、足りていない項目を追加して「経営のマテリアリティ」に統合。
ステップ4:審議・承認
経営会議、取締役会での協議・承認を経て、「経営のマテリアリティ」として決定。
- ※1 PESTEL:企業を取り巻く政治・経済・社会・技術・環境・法規制の観点から外部環境を分析するフレームワーク。
経営のマテリアリティ
東レグループは、「長期経営方針 “TORAY Challenges 2035”」の実現に向け、事業環境の不確実性が高まる中でも社会から必要とされ続ける企業であるために、経営として優先的に取り組むべき重要課題を「経営のマテリアリティ」として定義しています。
これらは、従来のCSRの枠組みにとどまらず、事業戦略、投資判断、経営基盤強化を貫く判断軸として位置づけるものです。
経営のマテリアリティ①「社会課題と不確実な事業環境の変化を機会に変える価値創造」
環境・資源制約の深刻化、規制強化、技術革新、地政学的変化などにより、事業環境の不確実性は一層高まっています。東レグループは、こうした変化をリスクとして捉えるだけではなく、社会課題・市場ニーズを起点とした成長機会として捉え、新たな価値創造につなげます。高付加価値化や次世代事業の創出を通じて、資本効率と持続的成長の両立を目指します。
取り組みの方向性
- 成長領域:環境・エネルギー/半導体/宇宙・防衛/モビリティ/健康・長寿 等
- 社会課題・市場ニーズ起点の次世代事業創出、高付加価値化
- 資本効率の向上(ROIC視点)
経営のマテリアリティ②「信頼の確立とレジリエンス(強靭化)」
地政学リスクの高まりやサプライチェーンの不安定化、環境・人権を巡る社会的要請の高まりを踏まえ、事業基盤の強靭化と社会からの信頼確立が、これまで以上に重要となっています。東レグループは、ガバナンスとリスクマネジメントの高度化を通じて、安全・品質・供給責任を果たし続ける企業であることを目指します。
取り組みの方向性
- 地政学リスク、サプライチェーンの安定性
- ガバナンス・リスクマネジメントの強化
- 環境・人権・サステナビリティ等、社会課題への対応
- 品質・安全・事業継続性の確保
経営のマテリアリティ③「企業基盤と組織能力の高度化」
中長期的な成長を支える基盤として、DXの推進や人材戦略の高度化、人権を尊重した働き方を通じて、変化に対応できる組織能力を強化します。多様な人材の活躍と生産性向上により、持続的に価値を創造し続ける企業基盤の構築を目指します。
取り組みの方向性
- DXの推進、生産性向上
- 人権・多様性、人材戦略、働き方改革
- 組織力・変革対応力の強化
経営のマテリアリティについては、以下のページをご覧ください。
マテリアリティへのアプローチ
東レグループは、マテリアリティに対してリスクと事業機会の両面からアプローチすることで、長期的な企業価値の向上と社会課題の解決を両立させることを目指しています。
リスクマネジメント
選定したマテリアリティに関連するリスクについては、全社的なリスクマネジメントの取り組みと連携し、総合的に管理しています。
事業機会
3つの経営のマテリアリティは、「長期経営方針 “TORAY Challenges 2035”」、「中期経営課題 “IGNITION 2028”」、「東レ・サステナビリティ原則」、各事業戦略・経営施策と一体で推進され、事業を通じた社会課題解決と企業価値向上の両立を支える中核概念です。
事業機会については、以下のページをご覧ください。
外部ステークホルダーへのインパクト
東レグループは、外部ステークホルダーとの関係性を重視しながら、事業や生産活動のアウトプットがどのようなインパクトをもたらすかを体系的に評価しています。以下は、その内容の一例です。
| 社会課題と不確実な事業環境の変化を機会に変える価値創造:気候変動対策の加速 | ||
|---|---|---|
| インパクト | 正のインパクト:バリューチェーン全体のCO2排出削減 | 正のインパクト:GHG排出削減による負の環境インパクトの低減 |
| インパクトを及ぼす活動 | 事業活動 | 生産活動 |
| インパクトを受けるステークホルダー | バリューチェーン全体 | 地域社会 |
| インパクト評価 | 気候変動の緩和 | |
| アウトプット指標 | CN貢献売上収益 |
|
| インパクト指標 | CO2削減貢献量 | 削減されたGHG排出量 |
| 社会課題と不確実な事業環境の変化を機会に変える価値創造:自然環境の回復への貢献 | ||
|---|---|---|
| インパクト | 正のインパクト:安全な水へのアクセス | 正のインパクト:自然環境への負の影響を最小限にするための取り組みを通じた、自然環境の保全 |
| インパクトを及ぼす活動 | 事業活動 | 生産活動 |
| インパクトを受けるステークホルダー | 地域社会 | |
| インパクト評価 | 安全な水の確保 |
|
| アウトプット指標 | 水処理貢献製品の売上高 |
|
| インパクト指標 |
|
生態系への影響評価 |
| 信頼の確立とレジリエンス:サプライチェーンの安定性 | |
|---|---|
| インパクト | 正のインパクト:製品供給の安定化 |
| インパクトを及ぼす活動 | リスク管理 |
| インパクトを受けるステークホルダー | お客様 |
| インパクト評価 | デューデリジェンス実施 |
| アウトプット指標 | デューデリジェンス実施比率 |
| インパクト指標 | 安定した製品供給 |
| 企業基盤と組織能力の高度化:人材戦略、働き方改革 | |
|---|---|
| インパクト | 正のインパクト:人的資本を通じた企業価値創造 |
| インパクトを及ぼす活動 | 人材育成 |
| インパクトを受けるステークホルダー | お客様、地域社会 |
| インパクト評価 | 社員の期待値と実感値のギャップによる組織状態の評価 |
| アウトプット指標 | EXスコア®(エンゲージメントスコア) |
| インパクト指標 | 東レグループの中長期的な成長 |

東レグループは、GRIスタンダード第4版をはじめとする国際的なサステナビリティ関連の基準・ガイドラインに基づき、2015年度に「CSRのマテリアリティ(重要課題)」を選定しました。
その後、第6次CSRロードマップの開始に合わせて2017年度に見直しを行い、さらに2023年度には、事業環境および国際社会の動向の変化を踏まえて改定を行いました。
CSRのマテリアリティは、ダブルマテリアリティの考え方に基づき、ステークホルダーにとっての重要性(ステークホルダーへのインパクト)と東レグループにとっての重要性(東レグループへのインパクト)の両面から調査・分析を行い、有識者からの提言も取り入れながら整理、運用してきました。
2022年から2023年にかけて実施したマテリアリティの見直しのプロセス
「東レ理念」や東レグループのあるべき姿を実現していくために、中期経営課題と連携して今後3年から5年の間で、優先的により力を入れて取り組むべき重要課題を選定しました。
❶社会課題の抽出
非財務情報の開示基準(GRIスタンダード、SASB、TCFDなど)、SDGs、ISO26000、国連グローバルコンパクト、OECD多国籍企業行動指針などを参考にして課題項目を抜き出し、35項目の社会課題を選出しました。
❷重要性の分析、評価
抽出した社会課題に関してステークホルダーにとっての重要性を確認し、社会への影響やインパクトを測るために、主要なステークホルダーであるお客様、社員、株主・投資家などを対象に、アンケート、インタビュー、デスクリサーチなどによる調査を行いました。また、同じく東レグループにとっての重要な社会課題を確認するために、グループ内でのアンケート調査なども実施し、両方の結果を分析・評価しました。
調査、評価方法
ステークホルダー
| アンケート名・調査名など | 対象 | 調査方法・評価方法 |
|---|---|---|
| マテリアリティに関する社員アンケート | 東レ(株)社員 | 東レ(株)の課長層および中堅社員にアンケートを実施し、その内容を定量的に評価。 |
| CSR調達アンケートの分析 お客様インタビュー |
お客様 | 2022年の1年間に東レ(株)が顧客企業から依頼を受けたCSR調達アンケートの内容を定性的に評価。 また、主要な顧客数社にインタビューを実施。 |
| 株主・投資家とのエンゲージメントの分析 | 株主・投資家 | 2022年の1年間に東レ(株)IR統括役員が対話を行った株主・投資家の意見を定性的に評価。 |
| グローバルリスクに関する調査 | 国際社会 | リスクに関する世界的なレポートである世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2022年版」を参照し、定性的に評価。 |
| 企業のESG活動に関する調査 | 一般市民 | 一般市民を対象とした、企業のESG活動に対する代表的なアンケート調査の報告書を参照し、定性的に評価。 |
東レグループ
| アンケート名・調査名など | 対象 | 調査方法・評価方法 |
|---|---|---|
| マテリアリティに関する役員アンケート | 東レ(株)役員層 | 執行役員以上の全役員、監査役、CSR委員会※2委員にアンケートを実施し、その内容を定量的に評価。 |
| リスクマネジメントに関するアンケート | 東レ(株)部長層 関係会社社長 |
東レグループ優先対応リスクの特定のために実施した既存アンケート調査のデータを活用し、その内容を定量的に評価。 |
| 長期経営ビジョン、中期経営課題に関する調査 | 長期経営ビジョン、中期経営課題資料 | 「長期経営ビジョン “TORAY VISION 2030”」および「中期経営課題 “プロジェクト AP-G 2025”」の内容を参照し、事業戦略との整合性を定性的に評価。 |
- ※2 CSR委員会が担っていた機能や役割については、2025年4月からサステナブル経営推進室が担っています。
❸妥当性の確認、重要課題の絞り込み

社外有識者を交えてWeb会議方式でダイアログを行い、東レグループがどのような課題により力を入れて取り組むべきかについて意見交換を実施しました。
社外有識者の方々には、専門家としての視点および外部ステークホルダーとしての視点の両面から、選定プロセスの妥当性や東レグループへの期待についてもコメントをいただきました。それらも踏まえ、35項目の社会課題を「ステークホルダーにとっての重要性」と「東レグループにとっての重要性」の二つの視点でマッピングしました。その結果、以下の図表のとおりマテリアリティ候補を20項目に絞り込みました。
さらに、「東レ理念」の内容なども考慮し、11項目に統合・整理しました。
❹取締役会での審議、承認
取締役会の協議機関である経営会議で審議した上で、取締役会での審議、承認を経てCSRのマテリアリティを選定しました。
東レグループのCSRのマテリアリティ
東レグループは、CSRのマテリアリティとして、東レグループの企業理念である「新しい価値の創造を通じた社会への貢献」に関する5項目と、常に重要課題として取り組むべき「経営の基盤」となる6項目の計11項目を選定しました。
新しい価値の創造を通じた社会への貢献
| マテリアリティ | 概要 |
|---|---|
| 気候変動対策の加速 | 革新技術・先端材料の提供による社会全体の温室効果ガス排出削減への貢献と、自社の排出削減を推進し、カーボンニュートラルへの移行を加速します。 |
| 循環型社会実現への貢献 | リサイクルの促進、バイオマス由来原料の活用、CO2の資源化などを通じて、持続可能な循環型の資源利用と生産活動を推進します。 |
| 自然環境の回復への貢献 | 安全な水・空気に貢献する製品、環境低負荷の製品などを提供し、緑地保全や化学物質の適切な管理にも取り組み、自然環境の回復に貢献します。 |
| 健康で衛生的な生活への貢献 | 健康・長寿、介護・医療現場の負担軽減、医療の質の向上、人の安全に貢献する先端材料を提供し、人々の健康で衛生的な生活の実現に貢献します。 |
| ステークホルダーとの共創と対話による発展 | ステークホルダーとの共創により社会課題の解決に貢献し、社会とともに持続的に発展していくことを目指します。また、適切な情報開示を行い、ステークホルダーとの対話を促進します。 |
経営の基盤
| マテリアリティ | 概要 |
|---|---|
| 安全・防災の徹底 | ゼロ災害を追求し、災害・火災事故防止を徹底するとともに安全な環境を構築し、社会と社員の安全を守ります。 |
| 倫理・コンプライアンスの徹底 | 社会的規範の遵守はもとより、高い倫理観と責任感をもって公正に行動し、社会の信頼と期待に応えます。 |
| 製品の品質と安全性の更なる向上 | 品質管理、品質保証および製品安全管理の仕組みをより一層強化し、高品質で安全な製品を提供します。 |
| ガバナンスの強化 | 経営のシステムや制度の見直し、内部統制の強化、リスクマネジメント(経済安全保障、安全保障貿易、情報セキュリティなどの事業活動にかかわるリスクの管理)を通じ、グループ全体の経営の健全性を保ちます。 |
| 持続可能なサプライチェーンの構築 | サプライチェーン全体で環境保全や人権尊重などを推進し、安定かつ持続可能なサプライチェーンの構築を目指します。 |
| 人権の尊重と多様な人材の活躍推進 | 「国際的に認められた人権」を尊重するとともに、多様な人材が創造力を発揮して活躍できる環境をつくります。 |