価値創造特集

東レは、電子回路に不可欠なMLCC(積層セラミックコンデンサ)の性能・品質に大きく影響するPETフィルムを、お客様との共創を通じて磨き上げ、また、業界初のリサイクルシステムを構築し、お客様のサーキュラーエコノミーにも貢献しています。

革新技術は、時代を超えて
用途を拡大していく

電波のノイズ除去や電源安定化のために様々な電子回路に組み込まれているMLCC(積層セラミックコンデンサ)は、半導体デバイスや基板の小型化に伴い、数百ミクロン単位にまで小さくなり、おおよそ1台のスマートフォンに800個、パソコンに1,400個、自動車には5,000個も使われています。東レのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム ルミラー®は、このMLCC製造用の離型フィルムとして世界No.1シェアを誇っています。
東レは1959年に、日本で初めてPETフィルム ルミラー®を工業化しました。当時は食品包装やラベルが主な用途で、表面の微細な形状にこだわる必要がありませんでした。その後、VHSやカセットテープなど磁気テープのベースフィルムとして需要が高まると、一気にPETフィルムの高機能化が加速していきます。磁気テープはフィルムの表面に磁性体を塗布した記録メディアであり、ノイズや劣化を抑制する平滑なフィルムが求められたからです。これに対し、東レは、フィルム表面の平滑性や摩擦を制御する「薄膜積層技術(NEST*)」を開発し、磁気テープ市場で大きなシェアを獲得しました。
やがて、これらの磁気テープ市場はDVDに代替されていきましたが、東レのPETフィルムは、ナノレベルで制御する加工・生産技術と融合し、MLCCのセラミック層を薄く、凹凸無く仕上げるのに非常に有効なフィルムへと進化を遂げました。加えて、大手MLCCメーカーとの共創により、使用済みPETフィルムを回収し再利用するシステムも実現しています。

  • NEST(New Surface Topography):粒子を含有するポリマーを表面に薄く 積層して、粒子を一列に並べ、突起の高さを揃える技術。

研究技術開発、営業、
生産の相互連携

研究・技術開発

研究・技術開発

無欠陥フィルムの
実現を目指す

岐阜フィルム技術部部長 松永 篤

数百から千層ものセラミックス絶縁層を重ねて製造するMLCCの工程において、東レのPETフィルムは、支持体及び離型フィルムとして使われています。
近年は、モバイル機器向けを中心としたMLCCの小型化・大容量化ニーズに対し、セラミックス層の薄型化・高積層化のトレンドが顕著で、フィルムのわずかな欠陥が、MLCCの性能や歩留まりに大きく影響するようになっています。それだけに、磁気テープ材料から強みとして蓄積してきたフィルム表面を構造制御するNESTを起点とした独自技術が、大きなアドバンテージとなっています。具体的には、均一な表面を形成する共押出・積層技術、厚みムラを低減する設計・制御技術、平滑ですべりにくいフィルムを均一に巻き取る技術等により、平滑表面と工程適性を両立させているところが高く評価されています。
さらなるPETフィルムの機能と品質の極限追求という点では、競合他社に先んじて、無欠陥フィルムの実現を目指し、無発塵プロセスの検討のほか、全ての異物を抑止する超クリーン原料の開発に取り組んでいます。

営業

営業

お客様と価値連鎖
ストーリーを作り上げる

ファインプロセス事業部 部長 利根川 浩一

営業部門は、お客様の納期、品質や技術開発等の要望に窓口として対応するだけでなく、部材関連メーカー、あるいは、お客様の営業部門との情報交換も密にしています。そして、様々な角度から中長期の市場・製品開発動向を探り、お客様製品のイノベーションに素材面から貢献することを目指しています。
東レのフィルム事業は、表面平滑・品質向上をはじめとする技術力に加え、プロセス管理力にも強みを有しています。営業部門はそうした強みを発揮できるよう、積極的にお客様の声に耳を傾け、お客様と東レの生産・技術・研究の各部門を結ぶループを構築し、お客様の開発方向性にベクトルを合わせていく重要な役割を果たしています。まさに東レの営業は、お客様とともに価値連鎖ストーリーを作り上げる仕事です。ただし、お客様の要望は、日々の何気ない会話からもヒントを得られることが多く、そこから新たな開発や品質の改善が始まることも少なくありません。そういった形でのお客様への貢献も、東レの営業力の目に見えない強みになっています。

生産

生産

東レ品質を
世界で実現し安定供給

生産技術第2部 部長 河田 輝久

東レグループは世界6極でPETフィルムを生産しグローバルオペレーションを展開しています。
その中で、旺盛な需要が継続しているMLCC用途に対しては日本、韓国、マレーシアでの生産体制を構築し、各社で生産能力拡大をタイムリーに推進してサプライチェーンへ安定的に供給しています。
日進月歩で高まる工程フィルムへの品質要求レベルに対応するため、生・販・技一体となって、ハード面・ソフト面の改善を進め、お客様工程での歩留まり改善に貢献し、世界最小のMLCCには現在東レのフィルムのみが採用されています。
さらに、東レ品質を世界で実現するため生産システムにDX等の最先端技術を導入し、品質や工程の安定化を進め、マザー工場(日本)から各拠点に展開しています。お客様との対話を大事にしながら今後も最高品質を追求し、市場に貢献していきます。

リサイクル

リサイクル

大手MLCCメーカーから
環境貢献で表彰

フィルムサステナブル事業推進室 室長 花村 剛

MLCC製造用工程フィルムのリサイクルは、10年前から構想はありましたが、フィルムに求められる品質レベルが高く、お客様とともに必要性を感じつつも、長らく具体的な取り組みをスタートさせるには至りませんでした。しかし、東レは、使用後回収の難しい品種のリサイクル加工及び活用実績を積み重ねてきた結果、昨今のサーキュラーエコノミーへの社会的要請が高まる中で、お客様とのモノづくりにおける共創活動において、これを実現しています。
東レは、お客様からMLCC製造工程において、使用済PETフィルムを回収し、再び同用途のPETフィルムとして活用するリサイクルシステムの構築に大きく貢献したとして、表彰を受けています。