INTERVIEW
「世界中に安全な水を届ける」の一歩先へ
水処理膜の新たな用途を開拓する。
理系出身なのに営業職を志望した理由は?
工学部工業化学科の出身なのですが、学生の9割が大学院に進学するという状況のなか、私自身はそんな選択に疑問を感じていました。当時、特に研究したいテーマがあったわけではなく、それなのに親に支援してもらってまで勉強を続ける意義が見いだせなかったのです。それよりも、就職してさまざまな人と出会い、社会経験を積んだほうがいいと考え、営業職を志望しました。
その中で東レに入社した理由を教えてください。
最初は商社を中心に回っていたのですが、やがてメーカーにシフトしていったのは、「営業として自分たちの製品を、誇りと責任を持って売りたい」と思うようになったからです。また、B to CよりB to Bの会社のほうが、より深くものづくりに入り込めると考えました。特に素材メーカーであれば、マーケティングやセールスの仕事を通して製品開発にも関わっていけます。東レは高い技術力を有するだけでなく、基礎研究を重視し、粘り強く極限を追及していく姿勢がある真面目な会社だと知っていました。そんな風土が自分に合うと思い、就職先に決めたのです。
担当業務について教えてください。
水処理に使われる機能膜製品の販売活動で、顧客への提案から受注、フォローまで一貫して担当しています。もとは国内顧客を担当していましたが、現在は米国・中国の顧客を担当しています。市場にどのようなニーズがあるか、グローバルセールスチームと協力しながら分析し、国内営業で培った製品知識を活かしてマーケットに提案しています。
担当している製品を紹介してください。
東レが開発・販売している水処理膜には、逆浸透膜(RO膜、NF膜)、限外濾過膜(UF膜)、膜分離活性汚泥法(MBR)用の精密濾過膜(MF膜)などがあり、RO膜やNF膜は海水淡水化や飲料水の製造、UF膜は浄水場での濾過、MBR膜は廃水処理などと、それぞれ用途が異なります。したがって、水処理プラントが求めるスペックにより、どの膜が最適なのかを考え、お客様に提案していくのです。
研修に参加したとのことですが、どういったものでしょうか。
シンガポールでの、1ヶ月半の研修に参加しました。テーマは2つあり、各国の水環境規制調査と新規需要の探索、各国での東レグループ企業の対応方針とニーズのヒアリングです。シンガポールでのPUB(シンガポール公益事業庁)の取り組みやニューウォーター(下水を処理し、飲料水化したもの)の考え方、インドネシアでの下水処理環境の現状など、実際に現地に行くことによってわかったことも多く、非常にいい経験になりました。
仕事を通して感じる東レの強みは?
水処理膜のパイオニアとして研究・開発を積極的に続けており、製品ラインナップが非常に多いことが最大の強みでしょう。ただし、これは諸刃の剣でもあり、その強みを活かすには営業の情報収集力が重要になります。このため、直接の販売先であるエンジニアリング会社だけでなく、プラントの発注元であるエンドユーザーのところにまで足を運び、細かくニーズを吸い上げるのです。そしてそれらの情報をもとに社内外で協議を進め、東レにしかできない提案を行います。さらに、東レの場合は水処理膜を販売するだけでなく、膜の性能が最大限に発揮されるようなプラントの制御方法を考えるなど、幅広い技術サポートが可能であり、これも大きな強みになっていると思いますね。
どのようなときに、自分の仕事が人々の役に立っていると感じますか?
日本では当たり前のように飲み水が確保されていますが、世界に目を向けると清潔で、安全な飲み水を十分に得られない地域は数多くあります。このため、政府はODA案件として浄水プラントの輸出を積極的に進めており、これに参画することで水不足の解消に貢献できるのです。実際にあったケースでは、自分の担当するエンジニアリング会社から「地下水を飲料水にするプロジェクトがあるので協力してくれないか」と相談があり、どんな提案ができるか考えました。難しかったのは、この地域では雨季になると地下水に海水が多く混じって塩分濃度が非常に高くなるため、既存のかん水用膜では飲料水の基準を満たせません。とはいえ、複雑な制御装置をプラントに組み込むとハンドリングしにくいうえ、コストもかかります。最終的には何度も設計シミュレーションを繰り返し、海水淡水化用途のRO膜とUF膜を最適に組み合わせることで要求に応えることができました。このときには、自分の仕事が世界中の人々の生活を支えているのだと実感し、改めて、やりがいを感じましたね。
今後のキャリア展望について教えてください。
国内の担当から米国・中国の担当に変わったばかりなので、しばらくは今の仕事にしっかり取り組んで経験を積んでいきたいです。ヘッドクオーターとして事業全体を俯瞰して把握することや、グローバルセールスチームと協力して営業活動を推進していくことはしっかりやっていきたいです。米国の最先端技術を学びつつ、ビッグマーケットである中国市場に適した新製品開発ができればいいなと思っています。その後は大型案件の担当や、現地法人の営業リーダーとしてのチーム運営にチャレンジしてみたいですね。
スケジュールSCHEDULE
PRIVATE
小学生のころから釣りに夢中で、今では三浦半島から船を出し、マグロに挑戦することもあります。まだ1回も釣れたことはないのですが、「待っている時間」も嫌いではないので満足しています。最近はゴルフも始め、休日はかなり忙しいですね。