東レグループのCSRマテリアリティ

東レグループは、「CSRのマテリアリティ(重要課題)」について、事業環境や国際社会の動向の変化も踏まえて、2023年6月に見直しを行いました。

マテリアリティ選定プロセス

東レグループでは、以下のプロセスで、有識者からの提言も取り入れながらマテリアリティを選定しました。今後も定期的に見直しを実施していきます。

マテリアリティ選定プロセス。①社会課題の抽出、非財務情報の開示基準(GRIスタンダード、SASB、TCFD)、SDGs、ISO26000、国連グローバルコンパクト、OECD多国籍企業行動指針などを参考に、社会課題を抽出。②重要性の分析、評価、アンケートや調査により、主要なステークホルダー(お客様・社員・株主・社会)と東レグループ双方の視点での重要性を分析・評価。③妥当性の確認、承認、社外有識者とダイアログを実施し、妥当性について意見交換を実施して絞り込み。④取締役会での審議、重要課題の絞り込み、経営会議での審議、取締役会での審議、承認を経て、CSRのマテリアリティを選定。

2022年から2023年にかけて実施したマテリアリティの見直しのプロセス

東レ理念や東レグループのあるべき姿を実現していくために、東レグループが、中期経営課題と連携して今後3年から5年の間で、優先してより力を入れて取り組むべき重要課題を選定しました。

社会課題の抽出

非財務情報の開示基準(GRIスタンダード、SASB、TCFDなど)、SDGs、ISO26000、国連グローバルコンパクト、OECD多国籍企業行動指針などを参考にし、課題項目を抜き出し、35項目の社会課題を選出しました。

重要性の分析、評価

ステークホルダーと東レグループ双方の
視点で重要性が高い課題を抽出
東レグループの重要性
(東レグループのインパクト)
ステークホルダーの重要性
(ステークホルダーのインパクト)
より力を入れて取り組むべき課題のマトリクス。縦軸:ステークホルダーの重要性(ステークホルダーのインパクト)。横軸:東レグループの重要性(東レグループのインパクト)。ステークホルダーと東レグループ双方の視点で重要性が高い課題を抽出

ステークホルダーの重要性、東レグループにとっての重要性を確認するために、主要なステークホルダーであるお客様、社員、株主などに、アンケートなどの調査を行いました。そして、その結果を分析・評価しました。

妥当性の確認、重要課題の絞り込み

社外有識者の方を交えてWeb会議方式でダイアログを行い、東レグループがどのような課題により力を入れて取り組むべきかについて意見交換を実施しました。また、選定プロセスの妥当性や東レグループへの期待についても、コメントをいただきました。
有識者の方からいただいたご意見、コメントを踏まえて、重要課題の絞り込みを行いました。

社外有識者
開催日 2022年11月24日(木)
参加者 有識者
馬奈木 俊介 氏 九州大学 主幹教授
岸本 幸子 氏 公益財団法人パブリックリソース財団 代表理事・専務理事
田中 竜介 氏 国際労働機関(ILO)駐日事務所 プログラムオフィサー 渉外・労働基準専門官
東レ(株)
松井 滋樹 CSR推進室 室長
加藤 貞夫 CSR推進室 主席部員
長田 乃利子 CSR推進室 主任部員
※ 組織名称、役職は当時のもの

社外有識者の主なご意見

馬奈木 俊介 氏馬奈木 俊介 氏

今後のキーワードは「サプライチェーン」と「グローバル」だと考えています。また、「生物多様性・ネイチャーポジティブ」の重要性も高まってきています。東レグループの新しい技術・製品などを通じて貢献できる部分が多いと思いますので、サプライチェーンがどのようなリスクを孕むか、また、新製品開発などを通じてどういったリスクを軽減できるか、あるいは機会を増やせるかなど、検討いただければと思います。加えて、項目間を含めたトレードオフの考慮も重要になってきています。
次に、今回のマテリアリティ選定プロセスは、何を大事にするかという重みづけがされていることも含めて、素晴らしいと思います。また、分析・評価で選出した項目を大括り化して絞り込む考え方も良いと思います。
社内と社外のそれぞれの視点にどのような差があるかについて、社内にフィードバックしていくことが大切だと思います。

岸本 幸子 氏岸本 幸子 氏

ジェンダー、国際的な雇用、障がい者など、「多様な人材の多様な知恵」が、企業の成長力や人権の尊重につながると考えており、地球環境保全と並ぶ重要テーマと捉えています。
また、高齢化や人口減少は日本最大の社会問題だと思いますが、長寿化は国際的問題でもあり、課題先進国である日本が貢献できる部分でもあると考えています。
マテリアリティでは、東レグループの問題意識や貢献できることをナラティブに伝えることが重要です。企業の姿勢として、「人権」という言葉が明確に表現されていることも大切だと思います。それから、今回の選定プロセスは、見える化・客観化のプロセスをしっかり行っていると考えます。また、マテリアリティは大括り化して、説明内容に細かい情報を入れていくと良いと思います。
次回以降、国際機関、NGO、消費者団体などとの対話プロセスを入れることを検討されてはどうかと思います。

田中 竜介 氏田中 竜介 氏

「人権尊重」は今後義務化されていく潮流にあります。責任ある企業行動に対する国際社会からの期待の高まりがその背景にあり、東レグループの事業が持続可能であり続けるために、人権尊重を自分事として捉えてマテリアリティへ反映することが重要になります。「国際的に認められた人権」の実現には、サプライチェーンも含めて自社が影響を与えうるあらゆる立場の人の人権を考えることが必要であり、ダイバーシティ、職場環境の整備、労働安全衛生などもすべてここに含まれます。
そのため、東レグループがどういうサプライチェーンでどういうモノづくりをしているか、脆弱な人々をいかに発見して救済しているかを説明し、見える化していくことが大切だと思います。
今回実施された選定プロセス自体は客観性が高いと考えます。次回は、社会的期待を把握するため政府や業界団体に意見を聞くこと、またグローバル企業として、調査対象の海外比率を高めていくことも重要と思います。

取締役会での審議、承認

取締役会の協議機関である経営会議で審議した上で、取締役会での審議、承認を経てマテリアリティを選定しました。

東レグループのCSRのマテリアリティ

東レグループは、CSRのマテリアリティとして、東レグループの企業理念である「新しい価値の創造を通じた社会への貢献」に関する5項目と、常に重要課題として取り組むべき「経営の基盤」となる6項目の計11項目を選定しました。

東レグループのCSRのマテリアリティ
東レグループのCSRのマテリアリティ

新しい価値の創造を通じた社会への貢献

気候変動対策の加速
革新技術・先端材料の提供による社会全体の温室効果ガス排出削減への貢献と、自社の排出削減を推進し、カーボンニュートラルへの移行を加速します。
循環型社会実現への貢献
リサイクルの促進、バイオマス由来原料の活用、CO2の資源化などを通じて、持続可能な循環型の資源利用と生産活動を推進します。
自然環境の回復への貢献
安全な水・空気に貢献する製品、環境低負荷の製品などを提供し、緑地保全や化学物質の適切な管理にも取り組み、自然環境の回復に貢献します。
健康で衛生的な生活への貢献
健康・長寿、介護・医療現場の負担軽減、医療の質の向上、人の安全に貢献する先端材料を提供し、人々の健康で衛生的な生活の実現に貢献します。
ステークホルダーとの共創と対話による発展
ステークホルダーとの共創により社会課題の解決に貢献し、社会とともに持続的に発展していくことを目指します。また、適切な情報開示を行い、ステークホルダーとの対話を促進します。

経営の基盤

安全・防災の徹底
ゼロ災害を追求し、災害・火災事故防止を徹底するとともに安全な環境を構築し、社会と社員の安全を守ります。
倫理・コンプライアンスの徹底
社会的規範の遵守はもとより、高い倫理観と責任感をもって公正に行動し、社会の信頼と期待に応えます。
製品の品質と安全性の更なる向上
品質管理、品質保証および製品安全管理の仕組みをより一層強化し、高品質で安全な製品を提供します。
ガバナンスの強化
経営のシステムや制度の見直し、内部統制の強化、リスクマネジメント(経済安全保障、安全保障貿易、情報セキュリティなどの事業活動にかかわるリスクの管理)を通じ、グループ全体の経営の健全性を保ちます。
持続可能なサプライチェーンの構築
サプライチェーン全体で環境保全や人権尊重などを推進し、安定かつ持続可能なサプライチェーンの構築を目指します。
人権の尊重と多様な人材の活躍推進
「国際的に認められた人権」を尊重するとともに、多様な人材が創造力を発揮して活躍できる環境をつくります。
  1. マテリアリティと関連した東レグループの取り組みについてはマテリアリティから見た「CSRロードマップ 2025」をご覧ください。

CSRロードマップの策定

東レグループは、CSRを計画的に推進していくために、CSRの3年間の中期計画をマテリアリティを織り込んで策定しています。
2023年6月には、第8次中期計画となる「CSRロードマップ 2025」を取締役会決議を経て公表しています。
「CSRロードマップ 2025」は、CSRの10個のガイドラインそれぞれに活動目標と主な取り組み、KPI(重要目標達成指標)を定めています。

「CSRロードマップ 2025」(対象期間:2023ー2025年度)

マテリアリティから見たCSRロードマップ

マテリアリティと紐付いた「CSRロードマップ 2025」の主な取り組みやKPIについては、以下の一覧表に整理しています。

マテリアリティから見た「CSRロードマップ 2025」

(PDF:1.10MB)

なお、2022年度までのマテリアリティと紐付いた「CSRロードマップ 2022」の主な取り組みやKPI・実績進捗については、こちらをご覧ください。

マテリアリティから見た「CSRロードマップ 2022」

(PDF:1.25MB)