株式会社加地テック(本社:大阪府堺市、代表取締役社長:鈴木博士、以下「加地テック」)と東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、共同で進めていた国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(理事長:石塚博昭、以下「NEDO」)の助成事業である「超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業/水素ステーションのコスト低減等に関連する技術開発/電気化学式水素ポンプの開発・実証」において、電気化学式水素ポンプシステムの開発・実証を2021年2月末で完了いたしました。
電気化学式水素ポンプシステムは、再生可能エネルギーなどの電力を用いて、水素の酸化還元反応により水素を圧縮するPEM形水素圧縮装置です。本事業では、世界最高水準の4.1Nm3/h×40MPa仕様の電気化学式水素ポンプシステムの商用化を目指し、東レが水素を圧縮するキーマテリアルである電解質膜とスタックの開発を担い、加地テックがそのスタックを内蔵したシステムを開発するとともに、19.6MPa仕様の電気化学式水素ポンプシステム実証機を試作し(※1)、山梨県が運営する米倉山電力貯蔵技術研究サイト(甲府市)に設置しました。
米倉山での実証試験では、NEDOプロジェクト「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/CO2フリーの水素社会構築を目指したP2Gシステム技術開発」(※2)の成果である、太陽光発電による電力と東レの電解質膜を用いた25kWPEM形水電解評価設備で製造したグリーン水素を、今回開発した電気化学式水素ポンプシステム実証機で圧縮し、19.6MPa高圧ガスボンベへの水素充填に国内で初めて成功し、実証試験を完了しました。これは、国内初の連続PEM形水電解・PEM形水素ポンプシステム実証となります。
電気化学式水素ポンプシステムは、従来の機械式水素ポンプと比較して、振動や騒音が無くコンパクトな設計が可能であることから、P2G(Power to Gas)設備全般、水素出荷用ボンベ充填設備や燃料電池フォークリフト充填設備等、水素圧縮を必要とする幅広い用途への展開が期待できます。今後、商用化(大容量化・高圧化)に向けて開発を続けて参ります。
加地テックは、経済産業省が脱炭素社会の実現に向けたイノベーションに果敢に挑戦するゼロエミ・チャレンジ企業の一員であり、また2020年12月7日に発足した水素社会の実現を推進する団体「水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)」の会員として、水素社会インフラ技術を担う圧縮装置の製造・販売・開発に積極的に取り組んでいきます。
東レは、現在進めている「中期経営課題“プロジェクト AP-G 2022”」において、全社横断的な取組の一つとして「グリーンイノベーション事業(GR)プロジェクト」を掲げ、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決を通じて社会に貢献することを目指しています。
本助成事業を含め、電解質膜、電極基材などの水電解・水素圧縮や燃料電池向け材料の開発、製造及び販売を通じて、カーボンニュートラルを可能とする水素製造(水電解)、水素インフラ(圧縮・貯蔵)及び水素利用(燃料電池)技術の発展に貢献していきます。