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A MATERIALS WORLD#06

地球に優しいスマートものづくりで資源の節約を

「わたしたちは自然が生みだす資源の総量の2倍以上を常に消費し続けている」。持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)はそう警鐘を鳴らします。この問題に向け、産業界では資源消費を抑え、効率を上げるものづくりの取り組みが始まっています。

グローバルに自然との共存を図っていくためには、素材産業の力が不可欠です。風力発電の大型ブレードに剛性と柔軟性をもたらす炭素繊維や電気自動車のリチウムイオン電池などはその一例です。しかし、皮肉にも生産で低炭素化をめざそうとすればするほどより多くの資源を消費し、自然環境の回復力を上回ってしまうというジレンマが生じています。この課題に対し産業界はどう対処していけばいいのでしょう。生命を育む自然を害することなく、膨れ上がる都市人口の旺盛な製品需要に応えていく処方箋はあるのでしょうか。

石油化学産業に目を向けてみましょう。薬や医療機器をはじめITやグリーン電力で使われる部材などにこの産業が役立っているのは疑う余地がありません。しかし一方、国際エネルギー機関(IEA)の報告をみると、自動車、航空、陸運、海運を抜いて石油を最も多く消費している産業が石油化学とされています。電力消費においてもそれは同様で、温室効果ガスの排出では産業界第3位、2030年までにその排出量は20%も増加すると予測されています。IEAのファティ・ビロル事務局長は「国際エネルギー問題への影響力を考えるとき、石油化学産業は最大の盲点」と述べています。

懸念される気候変動や温暖化をもたらす温室効果ガスの濃度上昇から見ても、化学製品を使う側も含め、素材産業全体で方向転換を図っていく必要があります。

希望が持てるのは、意識的な企業がより効率的で環境に優しいものづくりを行うようになったこと。将来性のあるグリーンプロダクトの開発やサプライチェーンの脱炭素化も始まっています。特に最新化学技術を用いたスマートものづくりは、素材製造が環境に及ぼす影響を抑えていくための有力な方法ともいえます。

現状を知り課題にチャレンジする

ただそれは簡単な仕事ではありません。持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の報告によれば、世界90億の人間が自然豊かな社会で暮らしていくためには、資源消費を現在の1/4から1/10まで削減する必要があるといいます。

素材を通じた社会貢献を理念に掲げる東レとそのグループ企業は、この現実を真剣にとらえ、今世紀になって深刻化している気候変動や水不足、資源枯渇といったグローバルな課題に先進の素材開発技術で果敢に立ち向かっています。

この挑戦を前に進めるため、東レは2030年までの達成目標を掲げています。たとえば環境貢献製品の供給量4倍、バリューチェーンへのCO2削減貢献量を8倍に拡大、自社開発の水処理膜による年間水処理量を3倍といったかたちです。また、風力や太陽光によるグリーン電力を使い、生産現場で発生する温室効果ガスと用水使用量を売上高原単位あたり30%削減する目標も掲げられています。

印刷分野でもその努力は続けられています。溶剤や接着剤、印刷などで用いられる揮発性有機化合物(VOC)は、吸い込むと長期の健康問題を引き起こす有害物質。その危険性への懸念が広がるなか、東レは、食品包装や洗剤、シャンプーの詰め替え用パッケージ向けの水なし印刷システムを開発しました。

水なし印刷は、省電力LED-UVまたはEB(電子線)技術とインキ乾燥方式を組み合わせた印刷手法で、揮発性有機化合物(VOC)が含まれる湿し水を用いず、CO2の排出も大幅に抑えます。これによりインキメーカーや印刷機メーカー、印刷業者などからなるサプライチェーン全体で環境負荷低減を図ることができます。「水なし印刷は品質だけでなく環境特性においても業界最高水準の印刷手法です」と米国のタップラベルテクノロジーズ社は述べています。東レの試算によれば、この印刷システムの採用により日本国内だけで2030年までに年間50万トン近くのCO2を削減できると見込まれています。米国環境保護庁の温室効果ガス計算ツールによれば、これは自動車96,000台分のCO2排出量にあたります。

次のリサイクルへ

また、石化燃料への依存度を減らすため、東レはポリエステルなど石油由来繊維の代替品として環境に優しい植物由来の繊維の研究開発を続けています。世界に先駆けてバイオマス原料から試作された100%バイオ由来ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維はその一例といえるでしょう。

また深刻化する廃プラスチックの海洋汚染については、解決法としてプラスチックのリサイクルが叫ばれています。東レはこの問題に対し二つの取り組みを行っています。ひとつは廃プラスチックから繊維を生みだす取り組み。捨てられたペットボトルや端材を集め、それをペレット(プラスチック粒)に加工、それをさらに原糸に変え、そこから新たに生地を作ります。もうひとつの取り組みは、使用済みナイロンからナイロン繊維を再生する回収循環型リサイクルです。

この他にもやるべきことはたくさんあるでしょう。しかし、こうした取り組みによって自然と共存する未来が少しずつ近づいてくることは間違いありません。

本コンテンツは、WSJ Custom Studiosによって制作されたオリジナルコンテンツの和訳です。

written by The Wall Street Journal Custom Studios