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The Art and Science of LifeWearNew Form Follows Function
9月17日-22日の期間、ロンドンのクリエイティブで文化的な活動の拠点「サマセットハウス」にて、ユニクロの展覧会「The Art and Science of LifeWear: New Form Follows Function」が開催されました。
東レとユニクロは、戦略的パートナーシップを締結しており、素材や商品開発のみならず、展覧会等での共同マーケティングによって、商品や素材の価値を世界に発信してきています。2017年のニューヨーク、2018年のパリに続き、ロンドンで開催する今年のイベントにおいても、体験・実験型の展示により、「LifeWear」をコンセプトとするユニクロ商品のデザインや機能のイノベーション、そしてものづくりのストーリーを体感する様々な仕掛けが施されました。
当コンテンツでは、9月16日のメディアデーにおけるファーストリテイリング・柳井会長兼社長と東レ・日覺社長のプレゼンテーション、そして展覧会での展示商品のうち、東レとユニクロの長期にわたるパートナーシップによって誕生した商品「ヒートテック」「エアリズム」「ウルトラライトダウン」「ドライEX」に秘められた東レの技術や、サステナビリティの取り組みについてご紹介します。
ファーストリテイリング 柳井会長兼社長 プレゼンテーション
メディアデーのプレスカンファレンスにおいて、柳井会長兼社長は、当展覧会の紹介と共にLifeWearのコンセプトやサステナビリティの取り組みについて紹介しました。
ユニクロの服は、ファスト・ファッションではなく、個人個人のライフスタイルに合わせ、時代を超えて長く着られる服、いわばTimeless な服です。そしてその服は日本の美意識と高度な技術が結合して生まれた精緻な部品であり、より良い日常生活を実現するための高品質な「道具」としてユニクロは捉えています。その根幹にあるのは、MADE FOR ALL=「あらゆる人のための服」という理念であり、丈夫さ、リーズナブル、豊富なラインアップ、無駄のないシンプルで機能的なデザインを併せ持つ服を作っています。そして、その機能性を支えているのが東レとの揺るぎないパートナーシップです。
今回の展覧会では、テーマ毎にゾーンを分け、それぞれの魅力的なインスタレーションを通じて、LifeWearの絶え間ないイノベーションやハイクオリティ、サステナビリティの取り組みを体現しています。
また、柳井社長兼会長はプレゼンテーションの中で「特にサステナビリティは、今日のアパレル業界にとって重要なテーマです。これまでとは異なる視点からユニクロを再発見してほしい」と述べました。
東レ 日覺社長 プレゼンテーション
同プレスカンファレンスにおいて、日覺社長は、東レのサステナビリティ・ビジョン、東レとユニクロの戦略的パートナーシップやサステナブル商品に関する共同の取り組みについて紹介しました。
東レは創業以来、「素材には、社会を本質的に変える力がある」という強い信念を持ち、「社会の公器として、事業を通じて社会の持続的発展に貢献すること」を目指してきました。
ユニクロとは、2006年の戦略的パートナーシップ締結以来、インナーウェアを中心に原料から縫製まで一貫して生産しています。昨今の取り組みとしてはダウン回収によるリサイクル・ダウンの生産、また回収PETボトルから作られたリサイクルポリエステル繊維を使用した高機能速乾ウェア「ドライEX」の生産等、サステナビリティに関する共同の取り組みをスタートさせました。
プレゼンテーションの最後には、「今後もユニクロ様の商品を通じて、東レの素材が持つ機能性・感性を備えた品質の高い服を世界中のお客様にお届けし、新しい価値と、便利で豊かな社会を提供していきます」と述べました。
冬のインナーウェアの常識を変える
ヒートテックの機能を表現するデモンストレーション。ミクロの世界の技術が巨大なスクリーンに映し出され、引き込まれるような感覚を表現しました。
冬の寒さをしのぐ方法として、従来は厚着・重ね着をすることが当たり前でした。重ね着をすると暖かくすることはできますが、動きにくくなる上、冬のファッションが制限されてしまいます。
そこでユニクロと東レは、これまでの服とは根本から違う発想で「寒さ」を解決する服を目指し、素材開発からの挑戦をスタートさせました。しかし、その道のりは険しく、試作品の数は1万着以上。開発に携わる人たちを支えたのは「世の中にないものを作る」という使命感でした。多くの困難を乗り越え、これまでの冬の服の常識を覆す「暖かく、軽く、そして快適な」ヒートテックが誕生しました。
Key Functions
ヒートテック は、レーヨン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタンの4本の繊維を複雑な構造で編み込むことで、吸湿発熱・保温・吸汗速乾・ストレッチ性等、複合的な快適機能を実現しています。
Direction: Mai Tsunoo (concept & text), Tangram (movie) Animation: nomena Graphic Design: Akihiro Kumagaya
ヒートテックの発熱の仕組みは、体から発散される水分を利用しています。汗や水分が蒸気として気体になると、水の分子が肌とヒートテックの生地の間を激しく動き回ります。その水の分子を吸湿性に優れたレーヨン繊維が吸着し、それでも動こうとする水の分子のエネルギーが熱エネルギーとなり、発熱します。発熱によって発生した暖かい空気は、髪の毛の10分の1という太さのアクリル繊維の間のエアポケットにとどまるため、保温性を確保することができます。
また、ヒートテックは暖かさだけでなく、他の機能も備えています。ポリウレタン繊維は体にぴったりフィットするストレッチ性を高め、ポリエステル繊維は水分をすばやく吸収し、乾燥させることができます。
365日の快適性を提供
エアリズムで使用されているテキスタイルを展示したコーナーでは、東レが開発した極細ポリエステル繊維による「軽くて薄く、滑らかなテキスタイル」を実際に体感してもらいました。
地球温暖化により世界の平均気温が上昇している中、インナーウェアは衣類と肌の間の空気の層「衣服内気候」を調節することで、着用者に快適さを提供しています。これを実現するために、男性向けエアリズムには東レの極細ポリエステル繊維が使用されており、吸汗速乾、通気性、そして滑らかで冷たい接触感を提供しています。
Key Functions
従来の綿100%の男性向けインナーは、吸水性はありますが、乾くまでにかなり時間がかかりました。
また、乾燥を早めるために合成繊維を使用すると、肌触りが気になるという難点がありました。そこでユニクロと東レは、軽くて絹のような滑らかさを生み出す極細ポリエステル繊維を使用したテキスタイルの開発に乗り出しました。
従来の合成繊維と違い、東レの極細ポリエステル繊維は、髪の毛の12分の1まで細さを追求し、糸の品質安定性によって軽くてシルクのような風合いを実現しています。また、生地表面の凹凸の少なさによって肌から生地への熱移動量が大きくなり、涼しく感じられます。さらっとした肌触りで、インナーを着ていることを忘れてしまうほどの着心地です。
さらに、極細ポリエステル繊維は、毛細管現象で吸った汗を内部に保持せず、従来の綿インナーと比べてすばやく外に拡散します。汗が乾くのが早いため、気化熱で肌の熱を素早くうばいます。そのため触れた瞬間にひんやりして、暑さによる不快感を軽減することができます。
エアリズムは、この極細ポリエステル繊維を使ったテキスタイルの開発により、ユーザーがインナーウェアを着用していることを忘れてしまうほどの高いレベルの快適性を提供しています。
軽く、コンパクトなのに暖かい
ウルトラライトダウンを風船で吊るし、驚くほどの軽さを体感してもらいました。
ウルトラライトダウンはダウンジャケットの常識を変えました。従来の厚手で重いダウンジャケットとは異なり、ウルトラライトダウンは軽くてコンパクトなのに保温性に優れています。その秘密は、ダウンを直接覆う東レの強くて細いナイロン糸を使用したテキスタイルです。
Key Functions
ウルトラライトダウンに使用されているナイロン糸は、人間の髪の毛の約10分の1の細さのため、ジャケットの外側を薄く、軽くすることができます。なおかつ、一本の糸は複数の微細な繊維で構成されているため、テキスタイル自体に耐久性があり柔軟なのが特徴です。
- 極細ナイロン糸の拡大画像
- 髪の毛の拡大画像
ダウンジャケットは通常、ダウンが漏れないようにするためのダウンパックと呼ばれる内側の袋で覆われています。そこで東レはダウンの外側の生地に高熱と圧力を加えて糸と糸の間の隙間を閉じ、ダウンパックなしてでもダウンが漏れない加工を行いました。その結果、小さなポーチに入れることができるほどのコンパクト化、軽量化を実現しました。
- 一般的なダウンウェア
- ウルトラライトダウン
- 従来のダウン生地拡大画像
- ウルトラライトダウン生地拡大画像
リサイクル・ダウンの取り組み
ユニクロと東レは、リサイクル・ダウンの協業をスタートさせ、2020年秋冬シーズンから、リサイクル・ダウンを素材の一部に使用したダウン商品を販売する予定です。お客様が着られなくなったダウン商品をユニクロの店頭で回収し、東レが新たに開発したダウン分離システムによってダウンだけを取り出します。その後洗浄工程を経て、新しいダウン商品の素材として活用します。
ウルトラライトダウンは表地が薄く縫製も複雑なため、解体の難易度が高く、従来の手作業ではダウンを効率良く取り出すことが困難でした。今回、専用の分離機械の開発によって、ダウンの切断、攪拌分離、回収までを完全自動化させ、従来の手作業に比べて約50倍の処理能力を実現し、作業負担を大幅に低減しました。
高機能性に加え、
環境に配慮した製品へ
ドライEXは、PETボトルからリサイクルしたポリエステル繊維を使用し、環境に配慮した製品に生まれ変わります。
「快適性」はスポーツにおけるパフォーマンスの重要な要素です。高機能速乾ウェア「ドライEX」は、運動中でも快適でドライな状態を維持することで、パフォーマンス向上に寄与します。これはポリエステル繊維の特殊なアーチ構造を採用しているためです。
また、この快適性に加え、ユニクロと東レはサステナビリティの取り組みを共同でスタートさせました。
Key Functions
ドライEXに使用される生地は、肌から素早く汗を吸収し、生地の表面に広く拡散させることにより優れた速乾性を発揮します。これにより、汗による肌面のべたつきを防止することができます。汗による不快感を軽減、軽量でさらりとした着心地で競技中のパフォーマンスをサポートします。
リサイクル・ポリエステルの製品化
サステナブル製品に関する新たな取り組みとして、2020年春夏シーズンのドライEXは、PETボトルからリサイクルした高付加価値ポリエステル繊維を使用します。リサイクル原料中の異物を除去するフィルタリング技術により、バージン原料同様に特殊な断面や多様な繊維の製造を可能とし、従来のリサイクル繊維よりもクオリティを向上させることを可能にしました。
さらに東レ独自のリサイクル識別システムで、PETボトルリサイクル繊維のトレーサビリティを実現しました。
これらの取り組みにより、新しく開発したドライEXは、従来品と同等の軽量・快適・吸湿性を実現しながら、より環境に配慮した製品となります。
ユニクロ グローバルマーケティング部 松沼部長
ユニクロのコンセプトであるLifeWearは、何年にもわたって従来の「ファッション」や「アパレル」の常識を覆してきました。ユニクロ・グローバルマーケティング部長の松沼礼氏に、なぜ東レがLifeWearを展開していく原動力になったのか、そしてユニクロが目指す服のサステナビリティにどのように貢献しているかを語っていただきました。
LifeWearに込めた想いは?
LifeWearはあらゆる人の生活を、より豊かにするための服、美意識のある合理性を持ち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちています。そして生活ニーズから考え抜かれ、長く愛用していただける普段着です。
世界中の人々が気軽に買える、ライフスタイルをつくる道具、そのような服を私たちはLifeWear と呼んでいます。
LifeWearを展開していく上でなぜ東レが必要なのか?
服の基本は素材なので、良い素材を使用していることは、LifeWearのイノベーティブな開発にとって非常に重要な要素です。20年近く東レと密接に連携することで、伝統技術と新技術を融合させ、誰もが快適に着ることができるデザイン性に優れた服を創り上げ、社会や環境への負荷を低減してきました。このパートナーシップから生まれた製品には、冬の常識を変えてきた「ヒートテック」、快適性を追求した「エアリズム」、そして軽量で速乾性および伸縮性に優れた「感動パンツ」などがあります。
要は、東レのイノベーティブな素材開発のおかげで、我々は人々の生活を快適に、楽しく、そして便利にする服を提供することができています。
ユニクロが目指すサステナブルな社会や服作りに対する東レへの期待は?
東レがイノベーションを継続し、より良い社会を目指していることによって、私たちも服の可能性を広げ、社会の変化に対応することができています。
東レの高品質でイノベーティブな素材を使用したLifeWearは、時代に左右されないデザインで、高品質、高機能、そして耐久性を兼ね備えています。時代を超えて長く着られる服を作ることで、お客様におしゃれを楽しんでいただきながら、持続可能な社会に貢献していきます。
今後も東レとのパートナーシップを継続し、世界に大きなインパクトを与え続けていきたいと思います。