東レ株式会社
東レ株式会社（本社：東京都中央区、代表取締役社長：大矢 光雄、以下「東レ」）は、この度、5G通信などに用いられるミリ波
１）帯の電磁波を高効率で吸収するミリ波吸収フィルムを創出しました。本ミリ波吸収フィルムは、20dB（99％）以上の高いミリ波吸収性能を有しながら、従来品対比 厚さ1/5、重さ1/10
2）を達成しました。本ミリ波吸収フィルムは、ミリ波モジュールを搭載する5G関連機器の電磁波障害を解消し、機器の軽量化や設計自由度の向上に貢献します。
近年、ミリ波を利用したローカル5Gを用いたスマート工場や、ミリ波レーダー通信を用いた自動運転などのスマート社会を目指した技術開発が活発に行われています。ミリ波は4G通信の100倍の高速大容量、1/20の超低遅延、多点同時接続といった利点がありますが、ミリ波の強い直進性に由来した反射や干渉によって生じる電磁波障害の対策も必要です。
この電磁波障害を解消するため、ミリ波を吸収する電磁波吸収シートが用いられますが、従来品は電磁波を吸収する金属粒子をシート中に多量に添加するため、高重量でした。また、高吸収とするため数ミリの厚さにする必要もありました。この重く、厚いミリ波吸収シートを5G関連機器に適用すると、機器設計の自由度や取り扱い性が低下するため、課題となっていました。
これら課題を解決すべく、東レは独自のナノ積層技術の応用により、低誘電体層と高誘電体層を交互に積層した多層型ミリ波吸収フィルムを創出しました。この多層構造によって高効率なミリ波吸収を実現し、20dB以上の高吸収性能を有しながら、シート厚みの大幅な薄膜化と飛躍的な軽量化を達成しました。さらに、本ミリ波吸収フィルムは厚みを変えることによって、周波数20GHzから100GHz範囲の任意の周波数の吸収に対応することができます。
開発したミリ波吸収フィルムは薄く、軽いため、ミリ波モジュールの製品設計自由度を阻害せずに、電磁波障害を解消することが可能となります。また、スマート工場などにも容易に設置可能であり、機器間の誤作動問題の解決にも貢献します。
東レは、これからもスマート社会などの次世代の社会構造の実現に向けて革新的な素材の研究・技術開発を継続し、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。
＜用語説明＞
１） ミリ波
電磁波で波長が1～10ミリメートル、周波数に直すと30～300GHzのものと定義されている。
２） 重さ1/10
77GHzを吸収する市販品と10cm角サイズで重量を比較した結果。
以 上
