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膵がんの診断を補助する体外診断用医薬品
「東レAPOA2-iTQ」の国内製造販売承認について

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2023.06.12

東レ株式会社



 東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、膵がんの診断補助を使用目的とした体外診断用医薬品「東レAPOA2-iTQ(アポエーツーアイティーキュー)」(以下「本品」)について、2023年6月8日に厚生労働省から製造販売承認を取得しました。
 本品は、血漿中のアポリポ蛋白A2※1(以下「APOA2」)の2種類のアイソフォーム濃度を測定する国内で初めての承認品目(新規品目)です。膵がんの診断の補助を使用目的とし、保険収載され次第、国内販売を開始する予定です。

 APOA2は、C(カルボキシル)末端に、アラニン(A)、スレオニン(T)、グルタミン(Q)のアミノ酸配列を有し、血液中では、全長のタンパク質(以下「APOA2-TQ」)とC末端が分解したアイソフォーム(以下「APOA2-AT」)が共存しています。
 日本医科大学大学院医学研究科 本田一文大学院教授(前国立研究開発法人国立がん研究センター研究所早期診断バイオマーカー開発部門長)は、膵がん患者の血液中で、2種類のAPOA2アイソフォーム(APOA2-ATおよびAPOA2-TQ)の量比が変化することを発見しました(参考文献参照)。

 このたび、東レは、日本医科大学および国立がん研究センターとの共同研究の実施ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究成果の活用により、2種類のAPOA2アイソフォームの末端構造をそれぞれ特異的に認識する抗体を独自に取得し、その抗体を用いて2種類のAPOA2アイソフォーム濃度を高精度に測定する検査薬を開発しました。

 日本における膵がんの罹患者数は約44,000人(2019年)、死亡者数は年間約38,000人(2020年)に上ります※2。また、膵がんは早期に発見できれば生存率の向上が期待されますが、自覚症状が現れにくく進行が早いため、早期に発見することが難しいがんの一つです。

 本品による検査方法は、血液を用いるため、より多くの方々が受診しやすい検査です。既存の腫瘍マーカーとは異なる物質を測定することから、既存の腫瘍マーカーでは検出できなかった膵がん患者を検出できることが期待されます。

 東レは、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」において、取り組むべき課題の一つに医療の充実と公衆衛生の普及促進に貢献することを宣言しています。今後も、先端材料・革新技術を活用した高付加価値医薬品等の開発推進により、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を具現化し、社会貢献とともに持続的な成長拡大を目指してまいります。

 本品の詳細は下記のとおりです。
 

<製品概要>
販売名 東レAPOA2-iTQ
一般的名称 アポリポ蛋白A2アイソフォームキット
使用目的 血漿中のアポリポ蛋白A2(APOA2)アイソフォームの測定
(膵癌の診断の補助)
製造販売元 東レ株式会社


<測定方法>
本品は、サンドイッチ法を原理とする酵素免疫測定法(ELISA)により、2種類のAPOA2アイソフォーム(APOA2-ATおよびAPOA2-TQ)の濃度を独立に測定します。
測定したAPOA2-AT濃度とAPOA2-TQ濃度の相乗平均値(APOA2-i Index)を求めることで、膵がんの診断補助に役立てます。


<補足説明>
※1 アポリポ蛋白A2(APOA2)は、高比重リポタンパク質(High Density Lipoprotein:HDL)の主要構成成分の1つ。主に肝臓や小腸で産生されており、末梢血中に大量に存在しています。全長77個のアミノ酸からなり、タンパク質が2つ結合した2量体を形成しています。
※2 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)


<参考文献>
  1. Honda K, Okusaka T, Felix K, Nakamori S, Sata N, Nagai H, et al. Altered plasma apolipoprotein modifications in patients with pancreatic cancer: protein characterization and multi-institutional validation. PLoS One. 2012;7(10):e46908.
  2. Honda K, Kobayashi M, Okusaka T, Rinaudo JA, Huang Y, Marsh T, et al. Plasma biomarker for detection of early stage pancreatic cancer and risk factors for pancreatic malignancy using antibodies for apolipoprotein-AII isoforms. Sci Rep. 2015;5:15921.
  3. Honda K, Srivastava S. Potential usefulness of apolipoprotein A2 isoforms for screening and risk stratification of pancreatic cancer. Biomark Med. 2016;10(11):1197-207.
  4. Honda K. Risk stratification of pancreatic cancer by a blood test for apolipoprotein A2-isoforms. Cancer Biomark. 2022;33(4):503-12.
 
以 上