東レ株式会社
東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、このたび、株式会社東レリサーチセンター(本社:東京都中央区、代表取締役社長:川村 邦昭、以下「TRC」)とともに、『水の運動性に着目した抗血栓性ポリマーの設計と人工腎臓の工業化』について、公益社団法人 高分子学会「2022年度高分子学会賞(技術部門)」を受賞しました。
今回の受賞は、東レのコア技術であるナノテクノロジーと計算化学、TRCの先端分析技術の融合により、水の運動性に着目した新しい抗血栓性ポリマーの設計技術を確立するとともに、当該技術を導入し、抗血栓性を向上させた人工腎臓の製品化に成功し、慢性および急性腎不全患者の生活の質(QOL)の向上に貢献していることが評価されたものです。
東レは今後、本技術を各種医療材料に展開し、抗血栓性を高めた新たな医療機器の創出を目指します。
今回の受賞内容は下記の通りです。
記
1.受賞題目
「水の運動性に着目した抗血栓性ポリマーの設計と人工腎臓の工業化」
2.受賞者
2022年度高分子学会賞(技術部門)受賞
東レ株式会社 先端材料研究所 医療システム研究室 研究主幹 |
上野 良之 |
東レ株式会社 先端材料研究所 医療システム研究室 主任研究員 |
藤田 雅規 |
東レ株式会社 理事 先端材料研究所長 |
菅谷 博之 |
東レ株式会社 医薬研究所 研究員 |
馬場 剛史 |
株式会社東レリサーチセンター 構造化学第2研究室 研究員 |
中田 克 |
3.受賞技術の特徴
血液は異物と接触すると凝固する特徴があるため、多くの医療機器には、血液が凝固しにくい抗血栓性という性質が求められます。東レは、ポリマーと相互作用する水の運動性が抗血栓性に関与するという独自仮説を立て、分子動力学シミュレーションやTRCによる中性子準弾性散乱などの先端分析を活用することで、新しい抗血栓性ポリマーの設計指針を獲得しました。
医療機器の中でも、腎不全患者の透析治療に用いられる人工腎臓は、特に抗血栓性が要求されています。人工腎臓は、円筒状のケースに中空糸膜が約1万本内蔵されており、中空糸膜を介して、患者の血液から老廃物が除去されます。東レでは、抗血栓性を向上させるために、人工腎臓では使用実績のなかった新規ポリマーを世界で初めて採用し、慢性および急性腎不全用の各種人工腎臓の製品化に成功しています。これらの製品は、従来品に比べ、膜寿命の延長や、治療後に人工腎臓に血液が残る現象(残血)の抑制などの特徴も報告されており、患者QOLの向上に貢献しています。
現在、計算科学主導での抗血栓性ポリマーの創出も可能となっており、カテーテルや血液の検査チップなどの用途や素材にあわせた抗血栓性ポリマーを開発しており、広範な展開が見込める基盤技術であることが高く評価されました。
4.実用状況
受賞技術を適用した中空糸型透析器「トレライト
®NV」を2011年に販売して以来、血液透析濾過器「トレライト
®HDF」、「トレスルホン
®NV」、持続緩徐式血液濾過器「ヘモフィール
®SNV」に展開し、累計1億本以上が使用され、抗血栓性向上による患者QOLの向上や医療スタッフの負荷軽減について、高い評価を得ています。
<ご参考>
■高分子学会、高分子学会賞について
高分子学会は、高分子に関する科学および技術の基礎的研究およびその実際的応用の進歩、学術文化の発展ならびにそれらを担う人材の育成を図り、もって社会の発展に寄与することを目的としています。
高分子学会賞は、我が国の高分子科学および技術の進歩をはかるため、高分子科学、技術に関する独創的かつ優れた業績を挙げた会員を対象に、その功労を顕彰することを目的に制定しています。
■2000年度以降の東レの「高分子学会賞(技術部門)」受賞履歴について
年度 |
研究題目 |
受賞者(敬称略) |
2020年度 |
電動自動車用高耐熱コンデンサ向け二軸延伸ポリプロピレンフィルムの開発と工業化 |
東レ株式会社
東麗薄膜加工(中山)有限公司
東レKPフィルム株式会社 |
大倉 正寿 他 |
2015年度 |
ナノ積層ポリエステルフィルムの開発と工業化 |
東レ株式会社 |
合田 亘 他 |
2010年度 |
細孔制御逆浸透膜の開発と工業化 |
東レ株式会社 |
辺見 昌弘 他 |
2008年度 |
二軸延伸ナノアロイフィルムの開発と工業化 |
東レ株式会社 |
恒川 哲也 他 |
2005年度 |
新規複合化技術による高性能FRPの開発と工業化 |
東レ株式会社
Soficar社 |
本間 雅登 他 |
2001年度 |
構造制御された二軸延伸PPSフィルムの研究開発 |
東レ株式会社 |
小林 弘明 他 |
高分子学会賞(技術部門)受賞履歴
https://main.spsj.or.jp/c15/gaku/gakuran.php
以 上