CFRP製モビリティ部材の高速一体成形技術を開発

facebookでシェアする twitterでシェアする Linkedinでシェアする

2023.02.16

東レ株式会社


 東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、このたび、軽量な炭素繊維多孔質材料「以下、CFRF(Carbon Fiber Reinforced Foam)※1」をコア材とし、力学特性に優れる熱硬化性プリプレグ※2をスキン材としたサンドイッチ構造体を有する炭素繊維複合材料(以下、「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)」)製モビリティ部材の高速一体成形技術を開発しました。
 本技術で自動車ルーフをモチーフに作製したCFRP製モビリティ部材において、従来のオートクレーブ成形と比べて成形速度10倍という高速一体成形を達成しました。また、スチール製モビリティ部材と比べて50%の軽量化を実現しています。今後、モビリティの電動化に対応する、軽量化や高レート生産が要求される部材での早期実用化に向けて、研究・技術開発を推進してまいります。

 ウレタンフォームなどの発泡体をコア材とし、熱硬化性プリプレグをスキン材としたCFRP製部材のサンドイッチ構造体は、軽量性と剛性を両立する構造として、航空機、自動車、船舶、インフラなど大型のパネル部材を中心に幅広く適用されています。しかし、コア材の形状を得た後、スキン材と貼り合わせて接着するため、製造時間を短縮したいという要望がありました。
 また、モビリティの電動化により、重いバッテリーを搭載するモビリティの航続距離を延ばすために、モビリティ部材のさらなる軽量化へのニーズが高まっていました。

 今回東レが開発した高速一体成形技術は、コア材となるCFRFとスキン材となる熱硬化性プリプレグとを、同一金型内で同時に形状賦形、熱硬化成形、接着できるため、ワンショットのプレスで大型パネルの成形を可能とします。
 具体的には、CFRFの特徴である膨張をプリプレグの硬化タイミングと同期させることで、短時間での一体成形を実現します。また、プリプレグの熱硬化樹脂が多孔質体であるCFRFに浸透することで、接着剤を使用することなくスキン材とコア材が接着され、信頼性の高い接合構造を形成します。本技術により、CFRP製大型部材の高レート生産が期待できます。
 また、CFRFは、従来のコア材よりも強度、弾性率、耐衝撃性に優れ、低比重(0.2~0.4)であるため、サンドイッチ構造体の高性能化と軽量化を実現します。実証モデルとして、自動車ルーフの大型パネル部材(縦1.2m×横1.2m×厚2.3mm)をプレス成形機にて成形速度10倍の5分で成形し、剛性試験、塗装性および遮音性など自動車向け実用性を評価し、従来スチール製と等価剛性で50%の軽量化を達成しました。さらに、特に重要となる落錘衝撃試験では、スキンコアの界面剥離を発生させず、優れた衝撃吸収性の発現を確認しました。

 今後、軽量化と高レート生産を同時に実現する本技術を提案することで、多様化するニーズを取り込むべく、研究・技術開発を推進していきます。将来的には、軽量素材の価値を最大化できるUAM(アーバンエアモビリティ) やドローンなどのニューモビリティに代表される新領域への展開も目指してまいります。

 東レは、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念のもと、先端材料・革新技術を生み出し続けることで、社会の発展に貢献してまいります。

 なお、本成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「革新的新構造材料等研究開発」の結果得られたものです。
 
図 CFRFコア/CFRPスキンで成形した大型モデル部材
(株式会社タカギセイコーと共同製作)


<語句説明>
※1) CFRF(Carbon Fiber Reinforced Foam):
加熱することでバインダー樹脂が柔軟になると同時に炭素繊維の復元力で膨張し、炭素繊維の短繊維で三次元的なネットワークが形成され、バインダー樹脂と炭素繊維が強く結合した構造を持つ東レ独自の多孔質材料。
2016年3月28日プレスリリース
超軽量と高剛性を両立する炭素繊維構造材料を開発
https://www.toray.co.jp/news/details/20160328001168.html
※2) プリプレグ:
繊維状補強材に樹脂を含浸させたシート状の中間材料。航空機の胴体・主翼・尾翼などの構造部材や、ゴルフクラブのシャフト、釣り竿、テニスラケットのフレームなどのスポーツ用途中心に幅広く用いられている。
 
以 上