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炭素繊維複合材料部材の高速熱溶着技術を開発
~航空機の高レート生産と軽量化に貢献~

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2023.02.01

東レ株式会社



 東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、このたび、炭素繊維複合材料(以下、「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)」)製の航空機部材を熱溶着により高速で接合する技術を開発しました。本技術により、CFRP製機体の高レート生産と機体の軽量化が期待できます。2030年以降の機体実用化に向けて実証を進めるとともに、CFRPのさらなる適用拡大を推進してまいります。

 世界の航空機需要は、新型コロナウイルスの影響を受け大きく低迷していましたが、2025年までには再拡大期に入り、2030年以降には座席数120~240席の次世代航空機の大型需要が予想されています。航空機構造のメインフレームとなる一次構造材には、長年の使用実績から高い信頼性を備える熱硬化性CFRPが適用されていますが、部材の組立における接着接合とボルトファスナー締結という煩雑な工程がボトルネックとなり、生産時間の点でアルミ合金製機体に大きく遅れを取っています。今後拡大が予測される大型需要を取り込むには、燃費改善に寄与する軽量化効果に加えて高レートでの生産が重要な課題となっています。

 東レは、航空機向け熱硬化性CFRP部材を溶接のように高速かつ高強度で接合する熱溶着技術を開発しました。
 本技術は、熱硬化性CFRPの表面に熱溶着層を形成させる東レ独自技術を応用し、部材表面を瞬間的に加熱して接着する簡易な接合方法です。この技術により、接着接合とボルトファスナー締結工程不要で熱硬化性CFRPの部材同士、さらには熱硬化性と熱可塑性のCFRP部材の高速組立が可能となります。

 本技術を適用した熱溶着層をもつ熱硬化性CFRPは現行航空機向けCFRPと同等の力学特性を有しています。また、熱溶着された構造体は現行航空機向けCFRP構造体の一体成形品と同等の接合強度を発現することを実証し、接合技術の実用化検討に向けての信頼性を確保しました。さらに、航空機の要素形状を模擬したデモンストレーターにて、熱硬化性CFRPの部材を熱溶着で高速接合することに成功し、要素技術のコンセプトを確認しました。この技術により、アルミ合金機体と同等以上の高レート生産が期待できます。
 本技術を適用したCFRP製機体はアルミ合金製機体対比でライフサイクル全体のCO2排出量削減に貢献し、ボルトファスナーの重量削減による機体の軽量化およびさらなるCO2排出量削減も見込めます。

 東レはボーイング社とパートナーシップを組み航空機製造、材料技術領域における幾つもの技術開発プロジェクトを推進しています。本技術は両社共通の目標に向けた技術開発パートナーシップの一例です。

 なお、本成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「次世代複合材創製・成形技術開発プロジェクト」により得られたものです。

 東レは「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」の中で、事業活動を通じて地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献することを表明しています。「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念のもと、先端材料・革新技術を生み出し続けることで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。
以 上
 

本技術を適用した航空機構造模擬部材(デモンストレーター)の熱溶着組立