東レ株式会社
東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、このたび、天然ガス製造の精製プロセスにおいて、高CO
2分圧下や不純物存在下といった過酷な環境におけるオールカーボンCO
2分離膜の高い耐久性を検証しました。
本分離膜を天然ガス製造に適用することにより、高効率なCO
2分離による運転コストの大幅削減が可能となり、また、天然ガス製造におけるCO
2削減に貢献します。今後、実用化に向けた試作や実証試験を加速してまいります。
サステナブル社会の実現に向けたCO
2排出量削減には、クリーンなエネルギー資源が必要です。天然ガスは発熱量あたりのCO
2排出量が最も少ない天然資源として活用されていますが、CO
2濃度が低いガス田の開発が優先的に進められた結果、近年はCO
2濃度が高いガス田が多く、天然ガス精製において効率的なCO
2の分離・回収がより求められるようになっています。
一般的なCO
2分離技術として用いられるアミン吸収法は、CO
2濃度が高いほどエネルギー消費量が大きくなるため、エネルギー消費が少ない膜分離法が着目されています。しかし、膜分離法に用いられる既存の高分子膜は、天然ガス精製における高CO
2分圧下や不純物存在下において、膜の目詰まりや不純物による可塑化で細孔形状を維持できず、性能が低下してしまうことから、性能を維持するための大規模な前処理装置が必要となり、運転コストが高くなる課題がありました。
東レは、2021年に創出したオールカーボンCO
2分離膜
※1に対して、東レが持つ精密構造制御技術を結集し、カーボンの焼成条件を最適化することで、天然ガス精製プロセスにおける過酷な環境であっても細孔形状を維持して高いCO
2分離性能を発揮するオールカーボンCO
2分離膜を創出しました。
実際の天然ガス精製を想定した高圧で水蒸気や芳香族炭化水素であるトルエンといった不純物が存在する環境での本分離膜のCO
2分離試験結果から、理想的な性能を維持、発揮してCO
2の高効率な分離が可能であることを確認しました。
これにより、従来の高分子膜で必要だった、不純物による可塑化や強度低下を防止するための前処理装置を大幅に簡素化し、運転コストの大幅削減が可能です。
また、本分離膜で分離したCO
2を再利用することで、天然ガス製造におけるCO
2削減にも貢献できます。将来的には、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)
※2やCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)
※3といったCO
2再利用プロセスへの幅広い適用も期待されます。
現在、本分離膜を用いた膜モジュールを試作中で、2023年度中に試作サンプルを提供して実ガス実証していく計画です。今後は天然ガス精製に関連するエンジニアリングメーカーをはじめとするパートナー企業と幅広く連携して実用化に向けた試作や実証試験を加速します。
東レは、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」のもと、地球環境や資源・エネルギー問題の解決に貢献し、カーボンニュートラルやサステナブル社会実現のため研究・技術開発に挑戦し続けてまいります。
【用語説明】
※1オールカーボンCO
2分離膜:
中空糸状である多孔質炭素繊維の支持体表面に薄い炭素膜の分離機能層を形成した2層構造によって高いCO
2分離性能を持つ分離膜。支持体を極限まで細径化することで膜モジュールの軽量化・コンパクト化が可能。
2021年4月15日プレスリリース
多孔質炭素繊維を用いた革新CO
2分離膜を創出
https://www.toray.co.jp/news/details/20210415001582.html
※2 CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):
CO
2回収・貯留技術。発電所や化学工場などから排出されたCO
2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するもの。
※3 CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization):
分離・貯留したCO
2を利用するもの。再生可能エネルギーによる水素を利用した有価物への変換などが社会的な取り組みとして検討されている。
本分離膜の各種環境におけるCO2分離評価結果