親水性が長時間継続する、肌にやさしいスパンボンド不織布を創出

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2022.09.29

東レ株式会社


 東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣)は、このたび、親水性が長時間継続する、肌にやさしいスパンボンド不織布を開発しました。このスパンボンド不織布はポリマー構造に親水機能を導入することによって、通水を繰り返しても親水性(※注1)が低下しないという特長を有しており、紙オムツやマスク、生理用品などの衛生材料用途に好適な素材です。量産体制を構築した上で、本格的な生産を開始します。

 衛生材料用のスパンボンド不織布には柔軟性が必要であるため、ポリエステルよりも柔軟な素材であるポリプロピレンが用いられています。ただし、ポリプロピレンは疎水性(※注2)ポリマーであり、紙オムツやマスク、生理用品など親水性が必要な用途では、不織布に親水剤を塗布する親水加工が行われます。しかし、表面への親水剤の塗布であるため、通水時には水とともに親水剤が流出し、親水性が低下しやすいという課題がありました。
    
 東レは、この親水性低下課題に関して、不織布の表面処理ではなく、不織布に用いるポリマーを親水化する研究を進めてきました。
 ポリマー改質が容易なポリエステルに着目し、検討を行ってきましたが、このたび、共重合成分の構造と分子量を制御することにより、特殊なドメイン構造(※注3)が発現し、このドメイン構造が発現した場合に、ポリエステルの親水性が飛躍的に向上することを見いだしました。その結果、繰り返し通水を行っても、親水性が半永久的に持続する、新しいスパンボンド不織布の開発に成功しました。

 このスパンボンド不織布は、ポリエステル不織布でありながら、柔軟性に優れるポリプロピレン不織布と同等の柔らかさを有しています。また、親水性が持続することによって、液残りや濡れ広がりが抑制されるとともに、素材としても肌刺激の指標となる細胞毒性(※注4)が認められない、肌に対して低刺激のものであるため、紙オムツやマスク、生理用品など、直接肌に触れる用途に好適な素材です。
<新規スパンボンド不織布外観>

 今後、この原料のポリエステルにバイオ原料やリサイクル原料を適用し、サステナブルな社会実現に向けた、環境負荷低減の取り組みを進めていきます。東レは今後も、革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、企業理念である、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んで参ります。

<親水性の評価>

 
<用語説明>
注1.親水性:水に対する親和性が高い性質のこと。 
注2.疎水性:水に対する親和性が低い性質のこと。
注3.ドメイン構造:他の部分と明確に区別された領域が存在する構造。相分離構造。
注4.細胞毒性:細胞に対して、死滅、もしくは増殖阻害などの影響を与える性質のこと。
 
以上