5G通信用の新規透明耐熱フィルムを創出

facebookでシェアする twitterでシェアする Linkedinでシェアする

2021.11.17

東レ株式会社


東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、優れた耐熱性や難燃性と5G通信に適した誘電特性を保持しながら、高い透明性を実現した透明耐熱フィルムを創出しました。本開発品は、5G透明アンテナをはじめ、透明フレキシブル回路基板※1(FPC)や透明ヒーター基材などの電子部品を中心とした幅広い用途展開が期待できます。
現在ユーザーへのサンプル提供を始めており、早期実用化を目指して研究・技術開発を進めてまいります。

超高速通信を実現する5Gは、高周波数帯域の特性上、電波が遠くまで届きにくいことから多数のアンテナが必要とされます。そのため、視認性や意匠性が良く設置自由度の高い透明アンテナが検討されています。現在、軽くて割れない特徴から透明回路基板として用いられているPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムや透明ポリイミドフィルムは、電気特性の一つである誘電正接※2が高く、5G通信の信号ロスが大きいことが課題となっていました。

一方、東レが世界で唯一展開する2軸延伸PPS(ポリフェニレンサルファイド)※3フィルム「トレリナ®」は、耐熱性や難燃性、電気絶縁性、温湿度変化に対して安定した低誘電正接などの5G回路基板に適した特性を有していますが、高耐熱ポリマー特有の黄色みがある不透明なフィルムでした。これはフィルム内部の極微小なボイドにより光が散乱し、透明性が低くなることが原因です。
そこで、新たに高分子設計技術と独自の粒子分散技術とを組み合わせることで、極微小なボイドをなくす新技術を開発しました。これによりPPSフィルムの優れた特性を保持しつつ、黄色みを低減し、透明性を大幅に高めることに成功しました。この高透明PPSフィルムのヘイズ※4はPETフィルムに匹敵します。

この高透明PPSフィルムを5G透明アンテナへ適用することで、視認性や意匠性に加え、様々な温湿度環境下における信号ロスを低減し、5G通信の安定化に貢献します。
さらに透明FPCや透明ヒーター基材などの電子部品用途、透明性と難燃性を活かした建材用途、検査や位置合わせに必要な視認性を確保でき耐薬品性や耐熱性が求められる工程離型フィルム用途など、幅広い用途への展開も期待できます。

東レは今後も「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」そして「ナノテクノロジー」という東レのコア技術を駆使して、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。
 
左:PPSフィルム(従来品) 右:高透明PPSフィルム

<用語説明>
※1) フレキシブルプリント基板(FPC):
薄く柔らかい絶縁性のあるベースフィルムと銅箔等の導電性金属を貼り合わせた基材に電気回路を形成したフィルム状の配線基板のこと。
※2) 誘電正接:
電気エネルギー損失の度合いを示す材料指標。絶縁体である樹脂に高周波を加えると電気エネルギーが熱に変化しエネルギー損失が生じる。値が低いほど電気エネルギー損失が少ない。
※3) PPS(ポリフェニレンサルファイド):
耐薬品性、難燃性、電気絶縁性、長期耐熱性に優れたスーパーエンジニアリングプ
ラスチック。融点280℃の結晶性樹脂。
※4) ヘイズ:
光の散乱度合いのこと。
値が小さいほど光の散乱が少なく透明であることを示す。

フィルムサイト
https://www.films.toray/

以 上