高感度、高精度な多項目アレルギー検査用バイオチップを開発

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2021.04.26

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、微量血液からアレルゲン特異的IgE抗体※1を複数項目同時かつ高精度に測定することが可能な、アレルギー検査用バイオチップ※2(以下「バイオチップ」)の開発に成功しました。
 本バイオチップにより、多量の採血が難しい小さなお子様をはじめとする患者の負担軽減と、医療現場におけるより正確なアレルギー診断の実現に貢献します。今後、アレルギー患者検体を用いた大規模検証を行い、早期の体外診断用医薬品の認証申請を目指してまいります。

 食物や花粉などのアレルギー疾患は、日本人の2人に1人が罹患している国民病であり、特に乳幼児から若年層の罹患率は増加傾向にあります。また、幼児期は複数項目のアレルギーを併発することが多いと言われています。
 アレルギー疾患を判定する手法として、血液中のアレルゲン特異的IgE抗体量を測定する体外診断用医薬品が医療現場で広く用いられています。ところが、患者負担を軽減するため、微量血液から複数項目のアレルゲン特異的IgE抗体を同時測定する場合、血液中のタンパク質や細胞などの夾雑成分による妨害のため、正確に測定することができないという課題がありました。
アレルギー検査用バイオチップ
アレルギー検査用バイオチップ
 
チップ中央部の微細柱状構造
チップ中央部の
微細柱状構造

 今回、東レがこれまでに開発した、血液中に極微量含まれる複数種類の遺伝子を同時に検出できる高感度DNAチップ「3D-Gene®(スリーディージーン)」のマイクロアレイ技術や、血液透析患者用の人工腎臓開発において培った、血液成分の付着を防ぐ低ファウリング高分子材料技術などを融合することで、微量血液による複数項目のアレルゲン特異的IgE抗体同時測定において高精度な測定を実現しました。社内検討の結果、20マイクロリットルの血液から多項目のアレルギー同時測定で、単項目測定タイプの既存体外診断用医薬品との定量相関性が95%以上となることを確認しました。

 東レは、「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」そして「ナノテクノロジー」という東レのコア技術を駆使して、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進しています。当社は今後も、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。

【用語説明】
1) アレルゲン特異的IgE抗体:
アレルゲンと結合し、アレルギー症状を引き起こす抗体。アレルギー疾患のバイオマーカーであり、血液中のアレルゲン特異的IgE抗体を測定することで、原因アレルゲンの特定およびそれに基づいた治療法の選択に利用される。
2) バイオチップ:
DNA、タンパク質、糖鎖等のバイオ分子が基板上に固定されたチップのことで、固定されたバイオ分子と特異的に相互作用する物質を検出できる。アレルギー検査用バイオチップでは、アレルゲン(タンパク質)が基板上に固定されており、特異的に結合するアレルゲン特異的IgE抗体を検出することができる。

以 上