PA6樹脂は、優れた耐熱性、剛性、強度を有しているエンジニアリングプラスチックで、自動車のエンジンルーム内部品や、家電製品の筐体などに多く用いられています。PA6樹脂に材料の寿命に関連する疲労耐久性を付与するには、柔軟なエラストマー1)を配合しますが、疲労耐久性を向上させると耐熱性、剛性、強度が低下するトレードオフの関係があり、PA6樹脂が持つ特性を維持しつつ、高い疲労耐久性を実現する新規材料の開発は長年の課題でした。
東レは、外力が加わった際に可動可能な構造を有するポリマーとして、分子結合部がスライドするポリロタキサン2)に着目し、ポリロタキサンをPA6樹脂中に均質に微分散化することで、PA6樹脂の特性と疲労耐久性の両立を目指しました。そこで当社独自のナノテクノロジーであるナノアロイ®3)による精密アロイ制御技術を駆使し、PA6樹脂中に、ポリロタキサンを最大限の効果発現が期待できるPA6結晶構造サイズの数10nmに微分散化することに成功しました。このしなやかな応力分散機構により、PA6樹脂が持つ高い耐熱性、剛性、強度を維持しながら、繰り返し折り曲げ疲労耐久性を従来の15倍まで高めた新規ポリマー材料を創出しました。