東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣)は、このたび、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂 トレリナ®で耐トラッキング性※1と強度を向上させた新グレード"A660HV"につきまして、国際的な製品安全規格のUL規格※2における「ランク0(ゼロ)」及び、IEC規格※3における耐トラッキング性の最高ランク「材料グループⅠ」を取得しました。600ボルト以上の耐電圧特性をもつ本製品を、高耐圧化・小型化が進む新エネルギー車の電装部品など、高い耐トラッキング性が求められる用途へ展開します。
PPSは、難燃性に優れた素材ですが、ナイロンやポリエステルに比べ炭化導電路を形成しやすく耐トラッキング性が低いことで知られています。当社は従来からトレリナ®耐トラッキング性グレードをパワー半導体モジュール用途を中心に販売してきましたが、従来の耐トラッキング性グレードは、フィラーを高充填しているため、靱性が低く、強度が不足する傾向にありました。
これに対して東レは、複数のポリマーをナノメートルオーダーで分散させることで優れた特性を発現させることができるNANOALLOY®(ナノアロイ®)技術を用い、PPSに耐トラッキング性ポリマーを微分散することで、難燃性と耐トラッキング性を両立しながら、強度の向上を実現いたしました。一般的なPPSに比べ、絶縁設計において沿面距離を約半分に縮めることが可能となり、製品の高耐圧化・小型化への貢献が期待されます。
今後、本製品を鉄道や太陽光発電に用いられるパワー半導体モジュールのハウジング用途に加え、高耐圧化・小型化のニーズが高まる新エネルギー車のパワーコントロールユニットやバッテリー、充電器等への提案を進めます。
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※1 耐トラッキング性:固体絶縁材料に要求される特性の一つ。絶縁物表面に何らかの原因により形成される炭化物が導電路(トラック)となることをトラッキングという。
※2 UL規格:アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.: UL)が策定する製品安全規格。材料・装置・部品・道具類などから製品に至るまでの機能や安全性に関する標準化を目的としている。
※3 IEC規格:国際電気標準会議 (International Electrotechnical Commission:IEC)が制定する国際規格。IECは各国の代表的な標準化機関によって組織される非政府間国際機関で、電気通信分野をのぞく電気・電子分野について、国際的な標準化を行っている。近年、耐トラッキング性に関してはUL規格より判定条件が厳しいIEC規格を重視するユーザーが増えている。