東レ株式会社(所在地:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、東レ水なし平版®と新たに開発した水溶性UVインキを用いて、印刷工程でのVOC1)フリー化と、省エネルギー化によるCO2の大幅削減を可能にする「軟包装用水なしオフセット印刷システム」への取り組みを開始しました。
東レ水なし平版®は、印刷時に揮発性有機溶剤を含む湿し水を用いないことや、製版時にアルカリ現像廃液を出さない等の特徴から、従来から環境に配慮した製品として広く認知され、世界52ヶ国、1500社以上の印刷会社様で使用されてきました。
今回新たに、水なし印刷用水溶性UVインキ原料を開発し、インキメーカー各社様向けに、販売を開始しました。このインキ原料TWV-Ptypeを用いた水溶性UVインキは、印刷後の版や印刷設備の洗浄時に、従来のVOCを発生する有機系の洗浄液ではなく、水系の洗浄液を使用することが可能となり、水なし印刷の環境優位性を一層高めることができます。
VOCの排出は、中国やアジア新興国を中心に、PM2.52)による環境汚染の原因の一つとして社会問題となっています。世界中でVOC排出の規制強化が進む中、中国では印刷業に対してVOC排出費用徴収制度の適用を開始するなど、VOCを排出しない印刷方式の必要性が高まっています。今回、販売を開始した水溶性UVインキ原料は、このような環境問題解決に貢献できるものと、大きく期待されています。
さらに、東レ株式会社は、この水なしオフセット印刷システムの技術を利用して、VOC削減のみならず、CO2の大幅な削減にも繋がる「軟包装用水なしオフセット印刷システム」の開発に着手しました。
軟包装とは、フィルム素材を使った包装で、軽量、柔軟、加工のし易さ、透明性、バリア性などの特徴から、食品や菓子、シャンプー・洗剤の詰め替え用など、幅広い商品の包装に採用されています。この軟包装に関わる印刷市場は、食品、生活用品向け市場ということから世界的な人口増加に伴い、今後も年率5~7%の安定した拡大が予測されています。
現在、軟包装印刷は、アジアでは主としてグラビア印刷方式(凹版)で行われていますが、有機溶剤を含むインキを大量に使用するため、VOC排出の原因となっている他に、加熱乾燥や排気燃焼処理に伴う膨大なエネルギー使用量(CO2排出量)が課題となっています。これに対し、東レ水なし平版®と、水溶性UVインキを用いた「軟包装用水なしオフセット印刷システム」では、省電力LED-UV技術によるインキ乾燥(硬化)方式を組み合わせることで、溶剤乾燥や排気処理が不要となるため、VOC排出量削減(1/50以下)に加えて、電気消費量も1/6以下にできることからCO2排出量も大幅に削減することが可能となります。
また、先進国を中心に、商品の多品種化・小ロット化に対応して、軟包装印刷の小ロット化が進んでいます。東レの「軟包装用水なしオフセット印刷システム」では、特に小ロットの印刷時においては、グラビア印刷方式に比べて、版代などのコストを安く抑えることができ、さらに、排気処理装置や防爆対応設備が不要となるため、印刷設備導入コストを抑制することができます。
「軟包装用水なしオフセット印刷システム」については、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の戦略的省エネルギー技術革新プログラムの助成を受け、インキメーカー様、印刷機メーカー様、印刷会社様と共同開発を進めています。2030年近傍には、国内で約50万t/年のCO2削減を目標とし、市場展開を加速します。この「軟包装用水なしオフセット印刷システム」をトータルソリューションとして提供することで、印刷業を環境負荷の小さな産業にしてまいります。
東レは、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変える革新素材の創出に取り組み続けて参ります。