東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、400℃以上の半導体製造工程に対応した仮貼り材料を開発し、サンプル出荷を開始いたしました。本開発品を適用することにより、薄ウエハ上にCVD-SiO2などの高信頼性絶縁膜や、高電導性を発現する良質な金属膜を形成することが可能になります。また、本開発品はSiウエハだけでなく、次世代パワー半導体で用いられるSiCウエハにも適用できる技術です。東レは、2016年度の本格量産を目指し、耐熱仮貼り材料の更なる用途拡大を進めてまいります。
最近の半導体デバイスにおける小型化・高性能化のため、薄型化したウエハ(以下「薄ウエハ」)の適用が拡大しています。しかし100µm以下の薄ウエハには反りが発生するため、それに対応可能な搬送技術が求められています。
薄ウエハ搬送方式として、非接触型、テープ支持方式、TAIKO方式などがありますが、いずれも、薄ウエハ搬送時の損傷リスク低減、高耐熱性、低コストのすべてを満足させる方式ではありませんでした。そこで最近注目されているのが、仮貼り材料による薄ウエハ搬送方式です。
仮貼り材料は、デバイスを形成するウエハ(デバイス基板)を薄く研磨するためにガラスやシリコン等の支持基板に一時的に貼り合わせる際に用いる接着剤に当たる材料です。デバイス基板と支持基板を貼り合わせ、研磨や電極形成、積層などの半導体製造のための高温プロセスを経た後、デバイス基板を支持基板から剥がします。このために、半導体製造プロセスに耐える耐熱性や接着性が必要である一方、工程が完了した後は容易に剥がせる必要があります。
従来の仮貼り材料の耐熱温度は250℃程度ですが、半導体業界からは、高い信頼性が得られる高温CVD絶縁膜形成や、「シンタリング」と呼ばれる金属配線の焼きなましなどの400℃レベルの高温処理プロセスに対応できる高耐熱仮貼り材料が求められていました。
そこで当社では、東レの電子情報材料事業を支える重要な技術であるポリイミドを始めとした耐熱ポリマー技術を応用した接着剤の研究に取り組み、今回、高耐熱性を有する仮貼り材料の開発に成功しました。
さらに、現行の仮貼り材料では、リリース層、接着層などにそれぞれの機能を分離した2層方式が一般的でしたが、今回開発した仮貼り材料は “高耐熱接着性”と“剥離性”という相反する機能を融合させた1層方式であり、2層方式と比べて低コスト、省プロセスが実現可能です。さらに、機械剥離、熱スライド剥離、レーザー剥離、溶剤剥離など剥離方式を選ばず用途に合わせていずれの方式に対応可能です。
すでに、東レは半導体デバイスの3次元パッケージ向け材料開発を推進するため、米国ニューヨーク州立工科大学(SUNY Poly: The State University of New York Polytechnic Institute) Colleges of Nanoscale Science and Engineering (CNSE)1)と共同研究をしています。この本開発品を、SUNY Poly CNSEの有する最新の設備にて実証して、早期に材料の実用化を目指し、有力半導体メーカーでの採用を目指してまいります。今回、SUNY Poly CNSEでの研究成果を含め、2015年9月3日から開催される第25回マイクロニクスシンポジウムにて、発表予定です。
東レは、中期経営課題“プロジェクトAP-G 2016”において、「情報・通信・エレクトロニクス」を戦略的拡大事業の一つと設定し、更なる事業拡大を目指しています。
今後も、当社の研究・技術開発の根幹を成すコア技術である高分子化学とナノテクノロジーの融合によって、コーポレートスローガンである”Innovation by Chemistry”を具現化する先端材料の開発を推進してまいります。