東レ株式会社(東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、新たな分子設計技術と架橋技術により、高い耐薬品性や耐熱性を実現しながら170℃の低温硬化ができ、かつ残留応力が従来の低温硬化型材料の約半分となる13MPa以下のポジ型感光性ポリイミドの開発に世界で初めて成功しました。本材料は、ポジ型の優れた解像性を有するとともに、汎用のアルカリ水溶液による現像が可能です。
特に低温硬化・低応力が求められる次世代半導体向けを中心に、多数の大手半導体メーカーでの評価が進んでおり、東レの感光性ポリイミドコーティング剤“フォトニース®”の新シリーズ「LTシリーズ」として、本格販売に向けた提案を加速してまいります。
携帯情報端末などITツールの高機能化・多機能化の進展に伴い、そのキーデバイスである半導体も処理能力の高度化が求められています。半導体のさらなる微細化、高速化の実現に向けては、回路形成に低誘電率の層間絶縁膜1)や高誘電率のゲート絶縁膜2)の導入が進められていますが、膜構造の脆弱化による耐熱性の低下や、熱による性能変化などの問題が指摘されています。また、より高密度化を行うため、半導体チップの積層やTSV構造3)の採用が広がっていますが、チップの薄型化によって、キュア後の残留応力によるウェハーの反りが課題となっています。
こうした次世代半導体の信頼性を高めるには、低温硬化が可能で低応力な保護膜4)が必要であり、特に、より高い解像度が得られるポジ型の感光性コーティング材料へのニーズが高まっていました。
これに対して、東レが今回開発したポジ型感光性ポリイミドは、新たにポリイミドの分子構造設計と架橋剤設計を行うことにより、要求される耐薬品性や耐熱性を高いレベルで実現しながら、エポキシ樹脂と同等の170℃での低温硬化を世界で初めて可能にしました。同時に、従来の低温硬化型材料の約半分となる残留応力13MPaという低応力を達成しています。また、ポジ型の優れた解像性を有するとともに、汎用のアルカリ水溶液による現像ができ、環境に配慮した設計となっています。
本材料は、次世代半導体デバイスの信頼性と歩留まりの向上への貢献が期待されます。
現在、半導体保護膜向けコーティング剤の市場規模は約200億円と推定され、今後も増加傾向の継続が見込まれています。東レのポジ型感光性ポリイミドコーティング剤“フォトニース®”は、世界最高レベルの感光性能と寸法加工精度を有する材料として広く採用されており、ポジ型感光性ポリイミドとしては世界第1位のシェアを獲得しています。
東レは、今回開発した低温硬化型ポジ型感光性ポリイミドを新たに製品ラインナップに加えることで、次世代以降の半導体保護膜、再配線、TSVなどの新規用途開拓を推進し、ポジ型感光性ポリイミドで50%以上のシェア獲得を目指します。
東レは、中期経営課題「プロジェクトAP-G 2013」において、「情報・通信・エレクトロニクス」を重点4領域の一つに設定しています。今後もコーポレートスローガンである “Innovation by Chemistry”を実践し、“Chemistry”を核に、樹脂設計技術、微細加工技術、ナノテクノロジーの融合によって先端材料を提供してまいります。
東レが今回開発した「低温硬化型ポジ型感光性ポリイミド」の技術詳細は下記の通りです。