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恐竜ちゃん魔改造、 挑戦の記録

奮闘と葛藤の開発日誌

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子供向けの玩具である「恐竜ちゃん」を魔改造し、缶をどこよりも遠くに飛ばす。そんな挑戦に挑んだ東レの「エンジニアリング開発センター」の18人。生贄発表から夜会までの1ヶ月半には、奮闘と葛藤のドラマがあった。極限のアイデアとテクニックと情熱を集結させた挑戦の記録。

Member メンバー

Development diary 開発日誌

Day 1生贄発表

リーダーが「ノーバウンド壁」を目標に掲げる。人の力での最高距離が22mであるが、チームメンバー全員が30m到達できると信じて、魔改造をスタート。みんなのワクワク・ドキドキが止まらない!

Day 2

まずは生贄の恐竜ちゃんの分解を行い、鳴く、歩く機構を綿密にチェックする。鳴き声は、元々のスピーカーが最も大きく響くため、そのまま使用。恐竜ちゃんの声が響くたびに、テンションが高まる。人力による缶蹴りにもトライ。空き缶が大きく変形、缶が回転することで失速することが判明。蹴った際のエネルギーをどのようにして缶を飛ばすことに活用できるかがポイント。

Day 3

人手によるテニスラケットやゴルフドライバーを用いた缶飛ばしを実施。ドライバーでは缶が大きく変形したが、ラケットは、空き缶の大きな変形が無く、26mの飛距離が出た。缶とラケットの当たる角度により、飛距離が大きく変わる知見も得た。
蹴り足の原動力として、”ゴム”、”バネ”、”ガウス加速機”、”エアシリンダー”、”真空砲”、”ペットボトルロケット”などのアイデア出しをメンバーで行う。アイデアが飛び交う中、笑顔や笑い声が絶えない!

Day 6

昨日に続き、テニスラケットなどでの缶飛ばしテストを行い、飛距離31mと目標距離にようやく到達した。メンバーが試行錯誤して諦めずにやり切り、チームの士気が大きく向上!!!
高速度カメラでの撮影技術もレベルアップし、インパクト時の缶の飛び出し角度、速度などが分析できる環境も構築。

Day 7

”振り子型”の簡易試作機の組み立てが完了。初回テストを行ったが、蹴り足の速度不足で5mの飛距離となった。その後、ばねの引っ張り長さを変えることにより、飛距離が増えたが目標にはまだまだ程遠い。

Day 8

試作機でのテストと平行し、我々の強みであるCAE解析でのデジタルツインに取り組んだ。缶の圧縮破壊試験にて物性データを取得し、解析精度を向上。これにより、目標達成に必要な蹴り足の速度、蹴り上げ角度、足先の形状の最適化に活用できる。

Day 9

足先の製作には3Dプリンターを使用。前日夜に設計、製作開始したものが翌日には完成しており、開発効率が大幅にアップ。
発起人も含めたメンバー全員が集合して打合せを行い、方向性が間違っていないことを確認できた。団結力がさらに強まる。

Day 10

メンバーで何度も話し合いを行い、恐竜ちゃんの名前とロゴを決定した。ロゴの中には「shoot for the moon!!」を入れて、壁を越えて月にまで飛ばすこと、困難なことに敢えて挑戦することを表現した。

Day 11

ばねを用いた振り子方式の1号機(以降、1号機と呼ぶ)の部品が揃ってきたため、組み立てを行った。足先にはテニスのガットは張れる機構とした。ガット張りは、実際のガット張り機を使用。これにより、ばねの引っ張り長さや本数、足先の構造を変更したテストを行うことができる。モノづくりの楽しさを改めて実感。

Day 13

1号機が完成し、ばね3本でも安定して蹴り上げが可能となった。蹴り足の速度は100km/hを超えたが、目標にはまだ到達できていない。蹴り上げ後の1号機の支持部材のアルミフレームのつなぎ目に欠けが発生しており、非常に大きな力がかかっている。これが原因で、安定した飛距離を出すことが難しく、さらなる改良が必要だと痛感。

Day 14

体育館にて1号機での初めての缶蹴りテストを行った。ノーバウンドで15mまで飛び、飛距離で23mまで到達。ばねの本数を1本から3本に増やしたが、飛距離は思ったほど伸びない。蹴り足の速度を高めるために、足先がテニスのガットでは、缶が反発するため、接触時間が短すぎることが原因か。30mノーバン壁のハードルの高さを改めて実感。挑戦の連続だが、やる気はますます高まった。

Day 15

恐竜ちゃんの歩行機構の検証機が出来上がり、初回テストを実施。床に張り付けた白いラインに沿って、ゆっくり動く。歩行、缶蹴りのイメージが出来上がりつつある。

Day 16

足先にストッキングを選定して缶蹴りテストを行った。蹴った後の缶には凹みが無いが、飛距離15mとまだまだほど遠い。缶との接触時間と蹴り足の速度との最適化が必要。試行錯誤の中で新しい発見が続々得られる。

Day 17

本日で魔改造期間の半分が経過。本体の組み立ても開始、恐竜ちゃんの全体の姿が徐々に現れてきた。当社の恐竜ちゃんの骨格は、主に木材で構成されている。木材は、金属よりも軽く、加工が容易であり、非常に優れた材料である。ただし、ばねの力や、開放時の衝撃に耐えられるかが大きな課題であるが、挑戦しがいがある。魔改造の期間に、たくさんの方から差し入れを頂いた。

Day 18

アドバイザーの力も借りて、振り子方式の2号機(以降、2号機と呼ぶ)の設計を開始した。ポイントは支持部材の強度を上げて、バネ作動時の蹴り足の動作を安定させる。みんなの知恵を結集して、さらにパワーアップさせる。

Day 20

歩行機の初号機が完成し、テストを開始。重量を重くして歩行速度を上げると、モータに過負荷がかかり、ショートが発生。急遽、高電流タイプのモータドライバに変更。試行錯誤を繰り返す。

Day 22

ようやく2号機が完成。総重量は100kgを超える。アルミフレームを何本も重ね、強固な構造とし、ばねが最大5本(約400kgの荷重)でも耐えることができる。サポートメンバーが、魔改造の本番コースを完全再現した。本番に向けて、抜かりなく準備を整えていく。

Day 23

社長が魔改造の部屋に視察。リーダーがこれまでの経緯や、恐竜ちゃんの機構を説明し、超高速で缶蹴りをする動作を見て、驚いて頂けた。社長から飛距離50mは届くのではとコメント、若手エンジニアは少し緊張気味・・・。

Day 24

過去の「魔改造の夜」をメンバーで鑑賞。未来の自分たちの姿を想像して大盛り上がり!エンジニアが笑顔で終わる姿を見て、我々のチームも優勝して、みんなで笑顔で喜び合いたい。

Day 25

2号機での缶蹴りのテストを開始。速度は170km/hまで向上したが、蹴った後の反動で100kgを超える2号機が大きく揺れる。その衝撃は驚異的であり、本番機がこれに耐えられるか不安がよぎる。

Day 26

2号機にて過去最高の27.8mの飛距離に到達。
ノーバウンド壁の目標が見えてきた。足先の材質を輪ゴム、ストッキング、ガット、スポンジなどの様々な素材を用いてテストを行う。色々な素材を試すたびにワクワク!

Day 27

恐竜ちゃんの外観を検討。未就学児によるチェックを通過するために生贄の外観を極力残すことと、歩行や缶蹴りに必要な機構を両立させることが必要。メンバーでアイデアを上げて、様々なデザインを議論。このデザインが我々の恐竜ちゃんの原型となる。

Day 28

歩行機の細かなセッティングが進む。赤外線センサの設置位置や反応速度を変えると、動き方が大きく変わる。左右の足の重さが異なり、重心が偏るため、駆動モータの出力を変えて、真っすぐに歩行できるように調整。恐竜ちゃんがスムーズに歩くたびにみんなの笑顔が広がる。

Day 29

足の動作方法(歩行足と蹴り足を入れ替える)の変更を行う。これまで取り組んできた構造、制御プログラムの大きな変更となるが、メンバーと議論を重ね、今なら間に合うと判断。知恵を絞り、この困難を乗り越える。

Day 30

蹴り足を瞬時に作動させるために、足を吊り下げたひもをハサミでカットする方法を考案。電磁バルブを用いて、シリンダを瞬時に動作させる。ばねの力に耐え、カットしやすい、ベストなひもの材質を選定。ひもが解けにくいように、“もやい結び”を習得した。

Day 31

本番を想定した通路にて、歩行機構の走行テストを実施。左右の足の振り足の速度、角度を調整。最初にしては10mをスムーズに動作しており、制御チームもひとまず安心。未就学児のチェックも通過し、本番に向けて本格的に動き出す。

Day 32

魔改造期間も残り1週間。蹴り足には、CFRPと竹とのサンドイッチ構造を採用。接着材の接着バラツキが強度に大きく左右することから、層ごとに慎重に貼り付けを行う。まさしく職人芸。
この蹴り足が、軽さと強度を両立できるベストな素材となる。みんなで力を合わせて最高の蹴り足を作りあげる!

Day 33

2号機のテストを続けているが、1週間で飛距離が10cmしか伸びていない。さらに、テスト中に蹴り足が壊れるトラブルもたびたび発生。それでも、予備の足の製作と、缶蹴りのテストをひたすら続ける。試行錯誤の連続だが、みんな諦めずに頑張っている。

Day 34

2号機で体育館の壁に衝突し、ようやく30m、ノーバウンド壁に到達した!!メンバーみんなで喜び合う。平行して進めていた本番機の製作・組み立ても行い、外観以外は完成。
一方、ばねを掛けようとした際に力に耐えられず、本体が破壊。ばね掛け用の大バサミも同様に破壊・・・。歓喜と絶望を同時に味わう日となる。

Day 35

締め切りまで残り3日。前日に破壊された本番機と大バサミの修理を急いで行う。恐竜ちゃんのばね掛けから歩行、缶蹴りの一連の動作を繰り返す。ばね掛けは5人で行い、危険が伴う作業であり、一瞬の気の緩みが大きな事故に繋がる。締め切りが迫り、焦りが出てくるが、慎重に進める。安全第一。

Day 36

残り2日。ばね掛け自体は、練習の成果が出て、短時間で行えるようになった。恐竜ちゃんが缶蹴りをすると、ばねの復元力と蹴った後の慣性力が働き、本体が大きく飛び跳ねる。壊れないか常に不安になる。メンバーの疲れが溜まっているが、気分転換でみんなで食事。リフレッシュして挑戦を続ける。

Day 37最終日

締め切りの最終日。昨日の晩から徹夜でテストを継続。動作のプログラムの修正、足先のゴムの張り具合、缶とのコンタクトのタイミングの調整を粘り強く行う。そして、締め切りの3時間前に、本番機でもノーバウンド壁を達成!!!眠気と疲労がピークの中、メンバー全員が歓喜の声を上げ、喜び合う。みんなでハイタッチし、笑顔が溢れる瞬間となる。
最後に、恐竜ちゃんを慎重に梱包し、本番会場にチャーター便で送付。

夜会前日

会場近くの宿泊先にて、予備品のチェック、スタンバイ時のメンバーの動作の最終確認。これまでの練習の成果もあり、メンバーの息もピッタリ合い、準備は完了した。リーダーも気合が入ってきており、あとは本番を待つのみ。

夜会

会場に到着し、恐竜ちゃんをセットアップ。試技を行うと大歓声が上がる。参加したメンバーみんなが達成感に満ちた一日となった。魔改造の期間中、サポートメンバーを始め、影で多大な支援をしてくだった皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。

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