有識者とのダイアログ企業理念の追求とSDGsへの取り組み

-革新技術・先端材料で世界的課題の解決に貢献する-

東レグループは、1926年の創業以来、”事業を通じて社会に貢献する”という精神で、今日まで歩んできました。一方、2015年の国連サミットにおいて、「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、世界各国が共通して取り組むべき、グローバルな社会課題が17の目標として提示されています。

こうした中、2018年も有識者の方々をお招きし、東レの企業理念の追求とSDGsについて、東レの取締役等の幹部と、意見交換を行いました。

東レグループの企業理念のあゆみ

1926年・・・
レーヨン糸の生産会社としてスタート
(パルプを原料とするレーヨンは人類初の化学繊維)
設立者(安川雄之助)の想い 「わが国家経済を益すること多大なるべき」
1955年・・・
「社会に奉仕する」ことを社是として明文化
1986年・・・
企業理念(「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」)を制定

東レグループの企業理念のあゆみ

有識者前列

黒田 かをり 様(一般財団法人CSOネットワーク事務局長・理事)
近藤 哲生 様(国連開発計画(UNDP)駐日代表)

東レ株式会社後列

出口 雄吉(代表取締役副社長/経営企画室長) / 中央左
平林 秀樹(取締役 CSR全般統括 総務・コミュニケーション部門長) / 中央右
谷口 滋樹(取締役 人事勤労部門長) / 左から2人目
野中 利幸(地球環境事業戦略推進室長) / 左端
原 稔典(前ライフイノベーション事業戦略推進室主幹) / 右端
山坂 尚彦(環境保安部長) / 右から2人目

平林 :私ども企業にとって、中長期的に社会に必要とされる存在であるためには、さまざまなステークホルダーからの期待を真摯に受け止め、企業経営を行っていくことが不可欠です。一方、「社会」からの期待に関しては、日々の業務の延長線上だけでは、必ずしも十分に意識することができません。グローバルな社会課題に精通しておられる有識者のお二方から、これからの時代に、東レに解決が期待される社会課題は何かについて、多様な観点からご意見をいただくことは、私どもの企業理念である「新しい価値の創造を通じて社会に貢献する」という精神を貫徹する上で大変重要な営みだと考えています。

昨年のダイアログでは、有識者の方々より、SDGsも参考にしながら、東レとしての長期ビジョンを提示していくことや、人権デューディリジェンスの重要性とサプライチェーンまで含めた取り組み推進などについてご指摘を頂戴し、この1年間、2030年の数値目標を織り込んだ長期ビジョンの検討や、東レグループ人権方針の制定を進めてきました。

今回は、SDGsをテーマに、私どもが世界の社会課題の解決に向けて、どのような点を強化していくべきか、ご指摘をいただければと思います。

SDGsと東レの取り組み(全体像)
  SDGsの目標 東レの取り組み
飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
  • GR事業(ロールプランター®の導入実験)
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
  • LI事業
  • 工場での大気汚染の防止(化学物質大気排出削減)
すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
  • 学校の理科教育支援
  • 科学技術館のワークショップ開催など
  • 東レ科学振興会/ASEAN3カ国および韓国の科学振興財団による理科教育賞等を通じた支援
ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
  • 女性活躍推進(東レ株式会社内)
  • 理工系女子学生育成イベントなどへの協力
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
  • GR事業(水処理膜による飲料水確保など)
  • 工場での用水管理
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
  • GR事業(再生可能エネルギー普及への貢献)
包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
  • ワーク・ライフバランス推進
  • 障がい者雇用・高齢者雇用の推進
  • CSR調達ガイドラインにおける人権尊重など
  • 東レグループ人権方針の策定
強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
  • 東レ科学振興会/ASEAN3カ国および韓国の科学振興財団による若手研究者等に対する研究助成
包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
  • GR事業(アラミド繊維ケブラー®による木造屋根補強など)
持続可能な生産消費形態を確保する
  • GR事業(バイオ資源活用/製品のリサイクル促進)
  • 生産現場からの廃棄物削減
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
  • GR事業(製品ライフサイクルを通じたCO₂排出抑制)
  • 製造段階でのCO₂排出削減
持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
  • 工場での水質汚染の防止
  • GR事業(水なし印刷技術)
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
  • 生物多様性基本方針による取組
  • 原材料調達における生物由来原料の調査
  • 緑化基本方針による取組(工場等による緑化活動など)
  • 本社・工場等における各種環境保全活動

GR : グリーンイノベーション LI : ライフイノベーション

  1. ※ ロールプランター®はミツカワ株式会社の登録商標です。ケブラー®はデュポン社の登録商標です。

「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」の策定とSDGsへの貢献

黒田 :2050年に向けて目指す姿を描き、2030年に向けて具体的な数値目標を設定するということは、大変意義のある取り組みと思います。先の見通しが完全につかない中でも、志ある目標を掲げるということは、リーディングカンパニーとして大きなインパクトがあるでしょう。

近藤 :国連でSDGsの達成に向けた企業連携に携わっている立場から見ていても、東レは、旧くから「新たな価値の創造」を通じた社会への貢献を企業理念として掲げ、自分たちが世に提供できる価値が何かということを常に追求してきた企業であるという気概を感じています。

本業で、実際に事業収益を上げられる活動として取り組まれていることが、SDGsの課題解決へつながっているということが非常に重要だと思います。

SDGsの達成には、2030年までに年間12兆ドル(約1,300兆円)のビジネス機会があると試算されているのです。

出口 :今現在も、これからの東レグループを支えていく将来の大型新規事業のテーマ設定を行い、全社プロジェクトで取り組んでいますが、その大部分は、地球環境問題の解決や、健康長寿社会の実現など、自ずとSDGsの目標に直結するものになっています。

そういう意味で、「SDGs」として意識するようになったのは近年ですが、実は、随分以前から、SDGsが掲げるグローバルな社会課題の解決を、企業理念の実現そのものとして取り組んできました。結果として、多くの目標に対して、現に貢献できていると考えています。しかし、現状にとどまらず、今後は、SDGsを「国際社会で合意されたグローバルな社会課題のリスト」と捉え、企業理念のさらなる追求の題材として、貢献をさらに深化させる努力をしていきたいと考えています。

黒田 :東レグループは、旧くから企業理念として、グローバルな社会課題の解決に取り組まれており、SDGsの17の目標の多くに貢献されてきました。今後は、マテリアリティとSDGsとの関連も整理されるとさらによいと思います。

また、SDGsの大切な視点に、「包摂性」があり、「誰一人取り残さない」ということがキーワードです。発展途上国を含めたすべての人を意識した事業展開を考えていくことも、今後期待されています。

山坂 :「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」(15~18ページ)については、率直なところ、GHG排出削減目標の設定が非常に重要かつ難題でした。素材産業であるがゆえに、ケミカルプラント等、エネルギー消費量は非常に大きく、必然的にGHG排出量も大きい中、大変悩みながら試行錯誤を続けてきました。

平林 :東レには、非常に実直に現実に即した真面目な議論を繰り返し、必ずや達成するという気概で目標を検討する社風があります。

一方で、やはり気候変動がこれだけの世界的課題である以上は、志をもって目指す姿を描きたいという想いで、チャレンジングな数値目標を設定しました。

近藤 :CO₂を減らしつつ事業を拡大するということは、非常に難題ではありますが、それに対しても、東レの場合は、気候変動対策自体がビジネス機会ともなっており、自社の取り組みについても、さまざまな発想の切り替え、既存の価値の見直しをしながら取り組んでいけるのではないかと思います。

真の「イノベーション」を目指して

野中 :おっしゃるとおり、地球環境に対する責任を果たしつつ、事業を拡大するために、イノベーションでそれを乗り越えるということは、SDGsへの貢献でもあり、ビジネス機会でもあります。社員にとっても、自分たちは、ビジネスを通じてSDGsに参画しているんだと、モチベーションをさらに引き上げて、引き続き追求していきたいと思います。

原 :別の分野になりますが、例えば医療は、高度化すれば必然的に医療費が上昇し、医療費削減が強く求められる中で、高度化自体が課題の源にもなってしまいます。事業の中ではこうした「矛盾」を感じる場面が多々ありますが、真のイノベーションというのは、そういう矛盾を解決できるものなのであろうと。公的セクターの方々のお力も借りながら、本当のイノベーションでそれを突破していきたいと、改めて感じました。

グローバルな人権尊重の取り組み

黒田 :世界が、グローバル企業の気候変動対策、そしてサプライチェーンの人権尊重に注目する中で、人権方針を策定した点も大変重要な取り組みだと思います。サプライチェーン全体での人権尊重について、方針や、サプライヤーに対する取り組み内容、何か負の影響があった場合の対処方策などを、しっかりシステム構築し、公表していくことが求められています。

谷口 :SDGsの17の目標の中には、雇用に関連する課題も複数ありますが、私どもは伝統的に、雇用を大切に、労働組合との対話を重視しながら運営してきました。

そうした中で、2017年のダイアログでのご指摘も踏まえ、 2017年12月に、「東レグループ人権方針」を策定しました。私どもは、中国・インド・東南アジアをはじめとするアジア各国や、中近東の各国、欧州、北米・南米と、「人権」に対する意識・文化もさまざまな非常に広範な地域に事業展開をしています。しかしながら、この人権方針は、そのような私どもが事業を行うすべての国々で取り組むという意思をもって策定しました。

サプライチェーンに関しては、繊維事業などでは、ずいぶんと広がりがあります。近いところから遡って、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。

収益を燃料に「社会に価値を提供する」という山を登る

近藤 :私が共感している考え方を少しご紹介すると、企業が「収益」を上げることの目的は、ただ単に配当を提供することだけではなく、「社会に価値を提供する」という「山」を登ること。その「山」を登るためには「燃料」が必要で、その「燃料」が「収益」なのではないでしょうか。

そして、その「社会に価値を提供する」という「山」を登るのは、「2階建てバス」。2階席で、遠方まで視野に入れ、全体の戦略を練り指令を出す人と、1階席で、しっかり目の前を見ながら安全に運転する人と、乗客から運賃を集める人と、さまざまな役割のメンバーが力を合わせて「山」を登ることなのではないか、と思います。

東レの皆さんが、社会課題の解決への貢献を強化しながら、事業業績を上げていく営みをさらに加速させ、SDGsの達成に大いに貢献してくれることを期待しています。

平林 :本日は、大変重要なご意見をどうもありがとうございました。

東レが、社会の期待に真摯に応える経営をしていくための貴重な糧とさせていただきます。