Close

東レ先端材料シンポジウム2016

先端材料が拓く 地球の未来 - 東レの研究・技術開発戦略 -

第1回

東レの研究・技術開発戦略

 第3回・東レ先端材料シンポジウムにご来場いただきまして、まことにありがとうございます。私からは「先端材料が拓く 地球の未来」と題しまして、東レの研究・技術開発戦略を中心にお話し申し上げます。

東レ株式会社
代表取締役 副社長
技術センター所長(CTO)
阿部晃一

東レ事業拡大の歴史

 東レは、過去90年間、先端材料を自社開発し、それらとシナジーのある戦略的連携・M&Aを行なうことで、事業を拡大してきました。そのキーワードは、「研究・技術開発こそ明日の東レを創る」であり、高分子材料の開発、機能・加工度の向上、技術の融合によって、大型新製品を創出してきました。また基礎研究を担う研究所として、1962年に基礎研究所、2003年には先端融合研究所を設立し、そして2019年の完成を目指して、当社、創業の地である滋賀県大津市に、未来創造研究センターの設置を決定いたしました。今後も、90年、100年を見据えて先端材料を持続的に創出していきます。

 当社の売上高の半分以上は海外であり、米国、欧州、中国、アジアなど、海外25の国と地域で、先端材料の事業拡大を進めています。そのために、米国、欧州、中国、アジアに17の研究・技術開発拠点と4つの情報拠点を置いております。その基本原則は、基礎研究、先端開発は日本で行い、それをベースに、現地ニーズを踏まえた商品開発を世界各地で強力に推進しております。

東レ事業拡大の歴史
~研究・技術開発こそ明日の東レを創る~

東レ研究・技術開発の基本思想

 当社の研究・技術開発の基本思想は、日本人の気質をフルに活かした、日本流イノベーションの創出です。まず一つ目は、研究・技術開発を軸とした長期視点の経営、基礎研究を重視する風土、人事施策では、研究者の自由裁量による、いわゆる、アングラ研究の推奨など。二つ目は、まさに超継続とも言える、先端材料・極限追求への粘り強い取り組み、三つ目は、当社は技術センターに、全ての事業分野の研究・技術開発機能を集約しており、分断されていない研究・技術開発組織による、総合力の活用と技術融合です。また、グローバルな知財戦略、そして、日本流イノベーションとグローバル開発の融合によるグローバルな事業拡大です。

東レ研究・技術開発の基本思想

継続的な研究・技術開発が競争の源泉

 超継続の一例をご紹介します。当社が本格的に炭素繊維の研究を開始したのは1961年。当社は大阪工業技術試験所(現産業技術総合研究所関西センター)の進藤博士の特許の実施権をいち早く取得し、1971年に商業生産を開始しました。今の言葉でいえばオープンイノベーションです。当社が進藤博士の研究の価値をいち早く見抜けたのは、それ以前のアングラ研究があったからこそであり、そして半世紀以上が経過した今、炭素繊維を大量に使用した、ボーイング787が世界中を飛んでいます。われわれの狙いは最初から航空機でしたが、市場が立ち上がるまで、じっと待っていたわけではありません。

継続的な研究・技術開発が競争力の源泉

Vision & Work Hard

 実は、5年前、同じこの場所で、第2回・東レ先端材料シンポジウムを開催し、iPS細胞の山中先生にご講演をいただきました。ノーベル賞を受賞される前の年です。先生の研究に対する基本姿勢は、ビジョンを持ってワークハードすれば、道は拓けるというものでした。我々の炭素繊維のケースも全く同じです。航空機の構造材料に展開するというビジョンをもって、地道な研究・技術開発を続けた結果、強さも、弾性率も、生産開始当時の3倍以上になり、航空機にも安心して使える素材になりました。

 このように、最初から本丸は航空機でしたが、商業生産を始めた当時はその市場はまだ存在せず、釣り竿やゴルフクラブなど、いくつかの用途でキャッシュフローを生みながら技術を磨いてきました。まさに壮大な先行投資による大型新事業の創出です。

 当社の先端材料創出の歴史を振り返ると、大きな事業につながる発明・発見は、毎年起こるわけではなく、また、その事業化には一定の期間が必要です。この歴史からも、当社の持続的発展には、新規大型事業のタネを継続的に仕込んでいくことが不可欠です。このような歴史を踏まえて、これ以降、最近の先端材料を中心にお話を進めていきます。

Vision & Work Hard